Research Abstract |
本研究は,制約に基づく文法理論である最適性理論の枠組みから,日英語のアクセント体系に見られる共時変異および通時変化を適正に捉える統合モデルの構築を目標とする。この枠組みにおけるアクセントに関する先行研究では,日英語の体系を同じ土俵で比較対照させて,その共通性と相違を明らかにするという観点は皆無であった。また,これら2言語の共時変異や通時変化を射程に入れた研究や,日本語の全ての語種(和語・漢語・擬声語・擬態語・外来語・それぞれの複合語)を考慮に入れた研究もない点で,本研究の視点はユニークなものと言える。 こうした状況にあって,本研究の今年度の成果は次のようにまとめられる。すなわち,1.日英語アクセント体系の全体像や詳細な論点に関して,最適性理論の立場から整理しつつ音韻理論上の意味合いを明らかにし,『音韻理論ハンドブック』(英宝社)や『アクセントとリズム』(研究社)などにまとめ,出版したこと,2.特に,英語アクセントの性質や分布が,1960年代から現在までの音韻理論の進展に伴って,どのような問題を残しどのように解決されてきたかを明らかにし,最新の成果を発表したこと,3.昨年度に引き続き,今年度もブリティッシュコロンビア大学において最適性理論の最先端の知見を得つつ現地にてフィールドワークを行い,英語アクセントの共時変異や進行中の変化に関する資料を蓄積したこと,などが挙げられる。 なお,来年度は本年度に得られた知見を基盤として,日本語と英語の単純語と複合語のアクセントに関する統合モデルをさらに進展させ,その成果を『日英対照音韻論』の形で出版し,その意義を広く世に問うつもりである。同時に,学会や研究会の出席・発表による努力なくして研究の発展は見込めないので,国内外での発表や調査は特に継続的に重視するつもりである。海外に場合には,英語アクセントの共時変異や進行中の変化を調査するフィールドワークも当然ながら含まれる。
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