2004 Fiscal Year Annual Research Report
語彙・構文論的アプローチによる所格交替現象の日英対照研究
Project/Area Number |
15520315
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
岩田 彩志 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (50232682)
|
Keywords | 所格交替 / 項構造 / 語彙・構文論的アプローチ / 交替現象 / 使用依拠モデル / 構文理論 |
Research Abstract |
1.英語の所格交替(spray paint onto the wall/spray the wall with paint)を起こす動詞は6つのクラスに分けられる(1.spray,2.smear,3.scatter,4.pile,5.cram,6.load)。従来の分析では、6つのクラスとも一様に、物質の位置変化と場所の状態変化を表すために交替が可能になると考えられてきた。しかし実はこれらのクラスが全く一様な訳ではない。まずsprayクラス、smearクラス、scatterクラスでは、その表す出来事が、物質が位置変化を蒙る事象としても、場所がcoverされる事象としても解釈できる。その結果、後者の解釈のもとではcoverと同じくwith形が可能になる(cover the table with a cloth)。次にcramクラス、loadクラスでは、その表す出来事が、物質が位置変化を蒙る事象としても、容器がfillされる事象としても解釈できる。その結果、後者の解釈のもとではfillと同じくwith形が可能になる(fill the glass with water)。最後にpileクラスは、実はこれまで気づかれてこなかったが、場所がcoverされる事象としても容器がfillされる事象としても解釈できる。つまりこのクラスはどちらの解釈によってもwith形が可能になる。 2.Pinker(1989)の語彙規則アプローチでもGoldberg(1995)の構文論的アプローチでも、実質的に1つのメカニズムで6つのクラスを説明しようとしている。しかしこの立場に立つと、sprayクラス、smearクラス、scatterクラスとcramクラス、loadクラスとでは違った特性を示す(前者の3クラスのwith形ほ必ずしもtelicにならないし、状態変化の鋳型に収まらないが、後者の2クラスではそうならない)事実を説明できない。しかしCroft等が主張しているようにusage-based modelの考えを構文理論と組み合わせると、これらの事実もうまく説明できる。
|
Research Products
(1 results)