2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520393
|
Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
荻野 富士夫 小樽商科大学, 商学部, 教授 (30152408)
|
Keywords | 文部省教学局 / 国民精神文化研究所 / 教学刷新評議会 / 国体明徴 / 教学錬成 / 伊東延吉 / 東亜教育 / 皇国民 |
Research Abstract |
第三年目にあたる本年度は、教学局の全体像の解明に努めた。「教学刷新ノ中央機関」として発足した外局の教学局は、文部行政の迷走も加わって不振を極め、国民精神文化研究所との競合も深まった。その打開の方向として「東亜教育」「興亜教育」への展開がめざされたが、華北占領地における教科書編纂などへの関与程度にとどまった。しかし、総力戦体制の遂行のために、あらゆる領域で「錬成」が第一義的目標となると、教学局の存在意義は高まった。特に対米英開戦後は、「大東亜建設ニ処スル文教政策」という国家目標の下で、戦時下学生思想指導の強化や「国民思想指導」の徹底が図られ、四二年には行政簡素化により、外局から内局へ移行したものの、「皇国民」錬成教育の完成へと邁進した。この間、国民精神文化研究所は一九三〇年代後半には「思想国防」を基軸に拡充を図るが、教学局との軋轢のなかで四〇年代には存在意義を小さくしていった。 このように、本年度までに全七章のうち九割近くまでまとめることができた。第四章以下の構成案は、次のように予定している。 IV 思想動員体制への転換-思想局(一九三四年-一九三七年) 一 「思想上ノ指導監督」施設としての思想局、二 思想局の対策と施設 三 「国体明徴」と「教学刷新」 V 「教学錬成」体制への移行-教学局<外局>(一九三七年-一九四一年) 一 「教学刷新ノ中央機関」としての教学局、二 教学局の対策と施設 三 大学の思想統制・動員、四 「東亜教育」の推進へ VI 「皇国民」錬成教育の究極化-教学局<内局>(一九四二年-一九四五年) 一 「皇国民」錬成教育の完成へ、二 「皇国民」錬成教育の末期段階 最終年度は、戦後教育への断絶と連続の問題を考えるとともに、第三年目までの研究の蓄積をもとに全体的な構想を練り直し、最終的な報告書の準備・作成にあてる予定である。
|