2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520396
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
西澤 奈津子 (古瀬 奈津子) お茶の水女子大学, 文教育学部, 教授 (20164551)
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Keywords | 書状 / 手紙 / 奉書 / 綸旨 / 御教書 / 高山寺本古往来 / 九条家本延喜式裏文書 / 書儀 |
Research Abstract |
奈良時代・平安時代の書状の目録・全文データベースを作成するために、今年度は正倉院文書と木簡、『万葉集』から奈良時代に関するものを入力し整理した。パーソナル・コンピューターの購入と入力作業の謝金は科学研究費を用いた。また、平安時代の書状については、「九条家本延喜式裏文書」(東京国立博物館保管)と「三条家本北山抄裏文書」(京都国立博物館保管)の写真版を購入し、「平安遺文」と照合し、「平安遺文」未収文書を確定した。書状の原本調査については、奈良文化財研究所において書状様木簡の調査を行い、京都大学総合博物館においては所蔵する書状に関連する典籍・文書にどのようなものがあるかを調査した。また、新潟で行われた唐代史研究会に参加し、中国史研究者から書儀・書状を含む敦煌・吐魯番文書についての知識・情報を吸収し、『大谷文書集成』を購入して、中国古代の書儀や書状についてのデータを収集した。 以上の基礎的作業や調査と並行して、今年度は奈良時代の正倉院文書や『万葉集』に残された書状から、平安時代初期の僧侶の書状、摂関期(平安中期)に編纂された最古の書状文例集である『高山寺本古往来』や院政期(平安後期)の『明衡往来』に至る古代の書状の歴史を概観した。また、書状の中でも論旨・院宣・御教書とよばれる奉書の成立過程を、奉書の実例を正倉院文書以降の文書から集めるとともに、摂関期の貴族の日記にみえる輪旨・院宣・御教書の語彙を収集し、蔵人や院司の記した書状についての史料を集めることによって考察した。その結果、このような奉書が成立し政治的に盛んに用いられるようになるのは、律令国家の官僚制から王権が天皇・院・摂関家などに分化し権門政治へと政治体制が変化していくことと深く関係していたことが解明できた。古代における書状の歴史についての概観と、綸旨・院宣・御教書など奉書の成立過程については論文にまとめ、公刊する予定である。
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