2005 Fiscal Year Annual Research Report
近世後期「地方文化人」情報伝達網の研究-安芸国井上家文書を素材として-
Project/Area Number |
15520404
|
Research Institution | Hijiyama University |
Principal Investigator |
頼 祺一 比治山大学, 現代文化学部, 教授 (50033494)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 富広 広島大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (50198280)
鈴木 理恵 長崎大学, 教育学部, 助教授 (80216465)
引野 亨輔 富山大学, 人間文化学部, 講師 (90389065)
|
Keywords | 神道 / 国学 / 地方文化 / 地方文化人 / 蔵書 / 神国思想 |
Research Abstract |
本研究は、日本近世における「地方文化人」が、どのような情報伝達網の中で、いかに自己を形成し、地域文化の向上に努めたかについて、安芸国山県郡壬生(現広島県北広島町)の井上家文書を中心に実証的に解明することを目的とした。神主家であり、18世紀中期以降寺子屋の師匠であった井上家歴代が「地方文化人」化するのは、化政期の時代的要請があり、各種情報を中国山地の山懐まで伝えるネットワークと人的交流があってはじめて可能となった。3年間の共同研究では、井上家の文書を調査・検討するだけでなく、安芸北部および石見国の神主家の調査を行い、とくに蔵書類の分析から多くの新知見を得ることができた。最終年度である本年度は、研究成果の取りまとめに専念したが、そこで得られた成果は次の3点があげられる。(1)「真宗地帯」において、神職たちは姻戚関係や擬制的親子関係などのネットワークの中で、日常祭祀・国恩祭・神道講談・神楽などの神事執行や書物貸借などを通して神道興隆を図り、国学思想を深めていった。(2)書物はそれを所持することがステイタスにつながり、とくに儀礼的な秘伝書を写本として所持することが儀礼社会といえる近世において自己権威化につながった。(3)子弟の私塾での経験や本居大平・近藤芳樹らとの交流が「地方文化人」の地位を高め、地域の文化発展につながっていくが、神国思想の普及など明治維新後の政策につながる側面も無視できない。 なお、具体的には「研究成果報告書」で報告するが、研究成果の公開ということで、井上家の「天保日記」(天保8年5月〜天保11年正月)の翻刻を収録した。
|
Research Products
(5 results)