2005 Fiscal Year Annual Research Report
族譜および書簡・筆記史料から見た宋代の宗族と地域社会に関する動態的研究
Project/Area Number |
15520430
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
遠藤 隆俊 高知大学, 教育学部, 教授 (00261561)
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Keywords | 移住 / 宗族 / 范氏 / 規範 / 秩序 / 財産 / 宋代 / 家 |
Research Abstract |
本年度は研究の最終年度にあたり、3年間の総括に重点を置いた。まず4月には中国の安徽大学で、また3月には河南大学で宋代の宗族に関する研究発表と資料の最終的な収集を行い、8月には宋代史研究会において研究の総括と情報交換を行った。さらに10月には安徽大学徽学研究センター主催の「国際シンポジウム;徽州譜牒、家族と社会」において、宋代の宗族に関する研究発表と司会を行った。これと並行して8月には『宋-明宗族の研究』を編纂し、3月には本研究の報告書を作成して学界に提供した。5月には『宋代社会の空間とコミュニケーション』の題目で書物が出版される予定である。 研究の内容としては、まず宗族の研究概要と今後の課題について、改めて総括した。これまで宋代の宗族研究は士大夫と地域社会の問題、および制度と思想、家と戸の観点から多くの成果が挙げられてきた。これを基礎にして、今後は移住や規範、秩序、財産関係などにも研究を進める必要がある。また、明清宗族との違いについては、宋代は宗族再編の萌芽、形成期であり、明清時代ほど十分に宗族が発達していなかった。またその担い手も士大夫が多く、民衆レベルにまで浸透していたとは言えない。この点が本年度に明らかになったところである。 また、前年度のまとめを含むが、本年度は宗族の秩序と規範についても多くの知見を得ることができた。すなわち、宗族の規範にはヨコの関係とタテの関係があり、これが螺旋階段状につながって人的な関係や規範を形成していた。これまでこの両者の存在を発表した研究はいくつかあるものの、その関係については十分に解明されていなかったので、本研究の大きな収穫と言える。これを前年度よりも理論化して報告書に発表した。また、移住と宗族の関係についても多くの知見が得られ、本研究で対象にした宋代の范氏は寄居という一時的な移住によって、自己の宗族を拡大する戦略を取ったことが明かとなった。 以上が本年度の実績概要である。
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Research Products
(3 results)
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[Book] 宋-明宗族の研究2005
Author(s)
遠藤隆俊, 井上徹
Total Pages
551
Publisher
汲古書院
Description
「研究成果報告書概要(和文)」より