2004 Fiscal Year Annual Research Report
11〜13世紀「アイリッシュ海世界」におけるネイションと国家
Project/Area Number |
15520443
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
有光 秀行 東北大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (80253326)
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Keywords | 中世史 / ネイション / アイリッシュ海 |
Research Abstract |
本年度の実績としてなにより強調したいのは、文書史料分析のさらなる展開である。研究費補助金で購入した、イングランド司教の特許状集の最近出版された諸巻、および、海外調査で読むことのできた、国内でまとめて参照することの困難な地方史関係の文献を検討することによって、とくに文書冒頭の「ネイション・アドレス」のあらわれる状況を、これまで以上に詳細に把握することが可能となった。その中でもとくに、イングランド北部の有力聖界貴族、ダラム司教の特許状において、よそと比較して遅くまで、また大量に、この「アドレス」がふくまれること、一方、国王行政府と関係の深い人物の登位を機に、それがほとんどすっかりといってよいほどみられなくなること、を検証できたのは大きな収穫であった。なんとなればそれは、「ネイション・アドレス」が、当時の人々のネイション観念を直接反映するのみならず、特許状の記載形式の変化(教皇庁から(?)イングランド国王政府へ、さらにその下の有力者層へ、という流れ)とも密接にかかわりうるものであることを示唆しているからである。これは研究開始当初に研究代表者の念頭に十全にあった点とはいいがたいのだが、国家構造の組織化を考える上でも重要な論点となりうるものであり、他地域の状況との比較のあらたな切り口がここにひらけたと考えている。そのほか、「ネイション・アドレス」のみでなく、特許状末尾の証人欄での「ネイション」名記載の状況も、今後さらなる分析を重ねるべき点として認識できた。 また、当該期のダラムに関してはシメオンによる歴史叙述『ダラム教会の起源と展開に関する論』の「ネイション」名をあわせて考察した。さらに前年度からの「マンと諸島の王国」研究を、やはり研究費補助金による海外調査および史料購入によって、今年度はとくに各地の一次史料の文言(「王」称など)そのものにそくするかたちで、展開した。
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Research Products
(1 results)