2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520445
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
北村 昌史 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 助教授 (20242993)
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Keywords | 住宅問題 / ベルリン / 市民 / 都市計画 / 郊外住宅 / 協会 / ドイツ / 社会史 |
Research Abstract |
前年度までに進めた統計史料の整理や住宅改革構想を論じた文献の分析をふまえ、ドイツ統一(1871年)前後の住宅改革構想に歴史的位置付けをおこなう作業を進めた。19世紀からヴァイマル共和国の住宅改革運動の展開に見通しをつけた2004年5月の社会経済史学会の報告を論文にし、また世紀中葉の悪住環境の象徴である「ファミリエンホイザー」と市民社会の関わりについて分析した。それぞれ統一前後の住宅改革の歴史的位置づけをおこなうために必要な作業であり、勤務先の紀要にて発表した。また、世紀中葉の代表的住宅改革組織であるベルリン共同建築協会の総会の議事録に以前から検討を加えていたが、その検討結果にも最終的な整理を加え、さらにベルリン史のガイドブックであるA・シュタインガルト著『ベルリン 記憶の<場所>を辿る旅』の共同訳に参加し、住宅問題にとどまらないベルリンの社会史的情報の充実に努めた。以上のような予備作業をふまえ、統一前後の住宅改革について次の点を明らかにした。まず、世紀中葉に説得的であった市民と労働者が一緒に住み、前者の良い影響を後者に与えるという発想の説得力が揺らいだ。他方、住宅改革の解決を郊外に求める発想や、都市社会を総体として把握する観点がこの頃からでてくる。これに対応した形で、住宅建築に当局の関与を求める発想がうかがえるが、これは建築への監督の次元のものであり、第1世界大戦後の当局が積極的に住宅建設に乗り出す関与のあり方からはいまだ遠い。最後に、世紀中葉の改革者が市民と労働者の二分法で社会階層を考えていたのに対して、統一期の論者は多様性の中で捉えている。この成果を持って10年来進めていた19世紀中葉の住宅改革運動に一区切りつける見通しをえ、著作としてまとめる作業を進めた。ベルリン共同建築協会の議事録の分析と統一前後の住宅改革に関する結果はその著作ないしは学術雑誌にて公表する予定である。
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Research Products
(3 results)