2005 Fiscal Year Annual Research Report
近代フランス農村における社会的結合関係の変革と多様化
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15520450
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
槇原 茂 島根大学, 教育学部, 教授 (00209412)
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Keywords | 農村社会 / 社会的結合関係 / 読み書き能力 / エミール・ギヨマン / 手紙 / アソシエーション / 共同性 / 文化変容 |
Research Abstract |
まず農民作家エミール・ギヨマンを中心とする文通網のあり様を分析しながら、当時の農村社会における、書く能力の習得・書く行為の意味、手紙の習慣の浸透、それらを媒介とする新しい社会的結合関係の形成について検討した。そして、初等教育を通じて習得された読み書き能力は、卒業後の農村青年にとって独学の重要な基盤になるだけでなく、自律性や創造性を発揮しながら、双方向的なコミュニケーショシの手段として手紙の習慣が根づいていたことを明らかにした。この過程で、独学を通じて生まれた新しい結合関係に支えられながら、自己変革と地域社会の変革をめざした一群の若者が現れたことを指摘した。この成果は、著書1で発表した。 また研究テーマに関連して、フランスのソシアビリテ(社会的結合関係)史の長期的な展望を得るために、アンシャン・レジーム末期のコンフレリー(信心会)から、19世紀の消防団や音楽協会、20世紀初頭の農業組合運動まで、多様な民衆的アソシアシオンの変遷を跡づける作業も行った。その成果は、著書2で発表した。 さらに研究テーマの今後の新たな展開に向けて、ギヨマンの作品の翻訳者である犬田卯が係わった日本の農民文芸、農民自治運動に関する調査も国会図書館を中心に行った。平成18年2月から3月にかけての滞仏調査では、ギヨマンの文筆活動を中心に、ソシアビリテの多様化に関する史料を収集しただけでなく、ブルボネ地方の郷土史家と交流し、テーマに関する助言を受けた。この成果は、大戦間期の日仏農民運動の比較研究としてまとめる予定である。 なお、本研究課題に深く関連する最新の研究成果の一つ、伊丹一浩著『民法典相続法と農民の戦略-19世紀フランスを対象に』(2003年)の書評を論文1として発表した。
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Research Products
(3 results)