2003 Fiscal Year Annual Research Report
北米におけるマイノリティーの第一次大戦参加と市民権獲得に関する研究
Project/Area Number |
15520457
|
Research Institution | Toyo Gakuen University |
Principal Investigator |
高村 宏子 東洋学園大学, 人文学部, 教授 (40216792)
|
Keywords | 市民権 / 参政権 / 米国(アメリカ) / カナダ / 戦争 / 女性 / 日系人 / 先住民 |
Research Abstract |
本研究は歴史的、文化的に共通点をもつ米国、カナダのマイノリティーの中で、第一次大戦後、全面的もしくは部分的に市民権を認められた女性、先住民、日系人の戦争参加と市民権獲得の関係を明らかにすることが主要テーマである。市民権の中でも最も重要な参政権(米国の日系人の場合は帰化権)獲得にいたる過程の調査研究は、戦争への貢献が市民の資格として重要であることを実証する一方、それぞれのグループの市民権に対する意織やスタンスの違いも明らかにした。 まず、女性参政権を阻んできた理由の一つに「鏡をとって国を守る」能力がないことがあった。第一次大戦時の女性の軍隊参加に加え、国内における女性の戦争協力は参政権付与への追い風となったことが、米国、カナダの議会資料から実証された。日系人の場合は、戦争参加から市民権獲得までの過程はそれほど単純ではない。カナダ日系人が人種差別を解消し参政権を獲得する目的で日系人による義勇軍を組織したのに対し、米国では組織的な動きは目立たなかった。が、大戦後は米国、カナダともに根気強い闘いの結果、帰還兵にのみカナダでは参政権、米国では帰化権が実現した。しかし、日系人すべてが市民権を得るにはいたらず、むしろ戦争参加と市民権の関係を実証する好例となった。先住民の場合はもっと複雑である。先住民の戦争参加は、市民権獲得だけが目的とは限らず、彼らの「戦士」としての伝統が動機となっていた場合もある。また、市民権の付与を同化政策と結びつけて強く主張する白人たちと、それに対して市民権の獲得をアメリカ人への同化、すなわち先住民の否定とみなして拒否する先住民もあり、一つの結論に導くことは困難である。本研究で明らかになったことは、戦争参加と市民権の関係は明白である一方、マイノリティー集団それぞれに複雑な背景があり、単純に処理することは危険があるということである。
|
Research Products
(2 results)