2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520466
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
中井 義明 同志社大学, 文学部, 教授 (70278456)
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Keywords | ペルシア / ギリシア人 / イオニア / 帝国支配 / エーゲ海域 / 貨幣 / 貴金属地金 / 経済的繁栄 |
Research Abstract |
本年度はイオニア反乱の原因とされるアケメネス朝ペルシアの抑圧的な帝国政策について考察した。通説ではペルシアは従属下に組み込まれたギリシア人に対して抑圧的な政策を取ったとされている。その事がギリシア人のペルシア人をはじめとする異民族に差別的な民族感情を醸成したと評されて来た。ペルシアの支配が実際にギリシア人に抑圧的だったのかという関心から研究を進めた。時代的にはキューロス2世が小アジアのリュディア王国を征服してからペルシア戦争までの約半世紀間、つまり紀元前6世紀後半に限定し、主たる研究対象をペルシア支配下のエーゲ海諸地域における貨幣の発行にしぼって考察した。 これまで、膨大な金や銀を含む貴金属を貢税という形でエーゲ海周辺諸地域から収奪し、アジア奥地に蓄積する事によってエーゲ海周辺諸地域では貨幣に使用する地金が不足し、既に貨幣經財に移行していたギリシア諸都市に大きな打撃を与えた、という説がペルシアの帝国支配の特徴と強調されて来た。 しかし、本年度の研究を通じてこの通説とは逆に、ペルシア支配下において貨幣の発行は停滞しておらず、むしろ時代が下るにつれて貨幣の発行所の数が増加し、地域的にも拡大して行く現象を考古学資料により確認したのである。 支配下に入ったギリシア人に対して敵対的、抑圧的と評される通説のペルシア帝国観の根拠の一つを本年度の研究を通じて批判した。
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Research Products
(1 results)