2004 Fiscal Year Annual Research Report
近代イギリスの福祉における個と共同性の関係史-個・相互扶助・国家福祉-
Project/Area Number |
15520471
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Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
高田 実 九州国際大学, 経済学部, 教授 (70216662)
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Keywords | 友愛組合 / 労働組合 / 老齢年金 / 国民保険法 / 包摂と排除 / 相互扶助 |
Research Abstract |
今年度の課題は、相互扶助のなかでも労働組合に焦点をあてて、それが1908年の老齢年金と1911年の国民保険法にどのように対応したのかを明らかにすることを課題とした。それに関するマイクロフィルムを購入し、分析を進めた。また、2004年9月には渡英して現地の資料調査をおこなった。ただ、これについては、まだ十分にまとまった結論を得ていない。基本的には、国民保険法が組合の相互扶助を掘り崩すのではないか、あるいは国家が組合運営に介入してくるのではないかという不安と、他方では国家の援助を受けることで組合員の共済費用の削減し、財政的な建て直しができるのではないかという期待が相半ばしていたが、結果的には「認可組合」として国家保険の運用に関与することが認められたことで、国家との共存の論理を認める方向に動いていったという点が指摘できるようだ。この点について、来年度もう少し分析が進んだ段階で活字化したい。 他方、昨年の課題であった友愛組合の対応については、裏面の編著のなかで日本語論文として発表した。基本的には、友愛組合の制度とアイデンティティの独自の構造、その包摂・排除/安定・拘束の仕組みと国家福祉の登場の論理、さらに国家福祉行政における包摂・排除/安定・拘束と友愛組合の位置を明らかにし、友愛組合の限界を補完する形で登場した国家福祉も、福祉のナショナリズムを強める新たな包摂と排除の構造を強めることになったことを明らかにした。つまり、主題との関係では、個にとって福祉の共同性の網の目が厚くなり安定の側面が強まるとともに、その排除と拘束の力も強まるというパラドクシカルな関係があったことを示した。 この成果は、2005年3月26日の九州西洋史学会で、日英比較という広い視点を含めて報告した。また、英語化の課題については、2005年7月オーストラリアで開催の国際歴史学会の予稿集に発表している。 その他、今年は個と共同性についての理論学習を多くおこなった。その成果を裏面の『西洋史研究』に発表している。
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Research Products
(2 results)