2003 Fiscal Year Annual Research Report
小規模墳の消長に基づく古墳時代政治・社会構造の研究
Project/Area Number |
15520473
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤澤 敦 東北大学, 大学院・文学研究科, 助手 (00238560)
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Keywords | 古墳時代 / 政治構造 / 社会構造 / 小規模墳 |
Research Abstract |
古墳時代の政治・社会構造の解明にあたって、大規模な首長墓の動向だけでなく、小規模墳の消長に重点を置いて検討した。そのための基礎的作業として、全国各地における調査の進展状況を把握し、比較検討の素材となる地域を選定した。その上で、今年度の重点的な検討対象として、比較的調査が進んでおり遺跡地図が整えられている宮城県と福島県について、知られている古墳時代墳墓全体を対象として、データベースを作成した。その際、緯度・経度も入力し、地図データ上での表示を可能にした。また、東北地方を代表する群集墳である宮城県台町古墳群について、その一部の測量調査を実施し、中小円墳中に存在する小型前方後円墳の実態を解明した。 これらのデータをもとに、福島県の会津盆地、宮城県の仙台平野と阿武隈川下流域を対象に分析を行った。古墳時代前期では、会津盆地では3段階、阿武隈川下流域と仙台平野では2段階からなる、墳墓の階層構造が確認でき、地域によって階層性の現われ方に違いがあることを明らかにした。その一方で、これらの地域では、前期と後期の小規模墳の分布に、共通性が極めて強いことが明らかとなった。しかもその分布状況は、仙台平野の前期で14ヶ所というように、かなり高密度であり、日常的な生産-再生産の単位と考えられる、数ヶ所の集落遺跡からなる単位に対応すると考えられた。このような分析結果から、これら小規模墳の被葬者が、日常的な農耕社会の生産-再生産の単位となる集団を代表する階層であると考えられた。
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