2005 Fiscal Year Annual Research Report
小規模墳の消長に基づく古墳時代政治・社会構造の研究
Project/Area Number |
15520473
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤澤 敦 東北大学, 大学院・文学研究科, 助手 (00238560)
|
Keywords | 古墳社会 / 小規模墳 / 政治構造 / 社会構造 |
Research Abstract |
本研究は、小規模墳の消長に着目することで、古墳時代の政治・社会構造を、新たな側面から明らかにしようとするものである。17年度は、各地域の小規模墳の実態解明のための資料調査を、引き続き実施した。また昨年度に引き続き、東北地方を代表する群集墳である宮城県丸森町台町古墳群の測量調査を行った。今年度は、竪穴系埋葬施設を有する古墳と、横穴式石室を持つ古墳が混在する区域を対象とした。この間の測量調査によって、台町古墳群の形成過程が、単系的な系譜でなく、複数の造営主体の同時存在の累積であることが明確となった。この成果をもとに、台町古墳群の所在する伊具盆地をケーススタディとして、東北地方における小規模墳の消長とその社会的基盤を明らかにした。 各地の小規模墳の比較検討から、ほとんどの地域において、その消長は基本的に共通することが明らかとなった。畿内の巨大前方後円墳を頂点とする、階層的政治関係と無関係では無かったことの反映と考えられる。その一方で、主体部などの要素では、地域ごとの違いが極めて大きい。大枠では単一の秩序に包摂されつつ、具体的側面では独自性が強いという様相に、古墳時代の政治的結合の特質が反映していると考えられる。この点を検討するために、前期古墳が波及していく過程での小規模墳の様相に注目した。特に、前段階で大規模な墳墓が見られない東日本を中心に、集中的な検討を行い、古墳時代の開始期に、まず広範に小規模な方形墳や前方後方墳が波及していくことが明らかとなった。しかも、これらの小規模墳には、直接的な畿内の影響は見られない。各地独自の運動が、連動することによって政治的結合が進んでいく過程として把握すべきである。このように、古墳時代の墳墓に表現された階層的政治関係の形成にあたって、小規模墳に埋葬された下位首長層の動向が、重要な位置を占めていると考えられることが明らかとなった。
|