2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520478
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
定森 秀夫 徳島大学, 総合科学部, 助教授 (90142637)
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Keywords | 陶質土器 / 渡来人 / 加耶 / 新羅 / 韓式系土器 |
Research Abstract |
これまで蓄積してきた日本出土の陶質土器、それに関連する写真資料などを、フィルムスキャナーでデジタル化していく作業を行った。また、発掘調査報告書などの文献から新出資料や見落としている資料を探し出す作業も行った。 実地調査としては、まず和歌山市および大阪市出土陶質土器関連資料を調査した。特に和歌山市岩橋千塚出土の新羅系有蓋高杯は3セット存在し、工人差および時期差が若干あることが分かった。このような複数個体の存在と工人差・時期差は、岩橋千塚の集団が朝鮮半島と直接通交した可能性を示唆すると思われる。 宮崎県内出土資料の調査では、これまで公表されてきた資料とともに、未公表の資料もいくつか実見することができた。特に、未公表の宮崎市出土ヘルメット形器台は金海・釜山地域の製品で、4世紀末まで上る可能性のあるものである。延岡市出土の高杯蓋は、その諸々の特徴から大加耶系の陶質土器であることを確認した。宮崎県では、陶質土器は主に古墳から出土するようで、集落からの出土は少ない。そして、軟質の韓式系土器の出土が確認されていないことから、渡来人の存在は例えば北部九州より希薄であろうという想定が可能と考えられる。 韓国の陶質土器資料に関しては、発掘調査報告書などにあたって日本出土品と対比可能な資料を探し出す作業を行った。実地調査として、釜山・金海・昌原・咸安・晋州・大邱・慶山・慶州・蔚山などを駆け足で回り、加耶・新羅地域の陶質土器を実見したり新たな情報を得たりことができた。特に、慶山地域出土陶質土器を嶺南大学校博物館で観察した結果、慶州地域出土のものとは形態・胎土・焼成などが明らかに異なることを確認し、日本出土の新羅系陶質土器もその製作地を特定していくことが可能であることを実感した。
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