2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520489
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
岡林 孝作 奈良県立橿原考古学研究所, 調査第一課, 主任研究員 (80250380)
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Keywords | 古墳時代 / 木棺 / 樹種同定 / コウヤマキ |
Research Abstract |
昨年度から継続して、古墳時代木棺用材の分析資料の収集と、文献収集を主に行い、あわせて昨年度に試料採取及び樹種同定を実施した兵庫県綾部山39号墳、大阪府長原古墳群について成果の一部を公表した。 木棺用材の分析資料の収集は、(1)出土した木棺材の試料採取および樹種同定、(2)木棺材に利用された樹木の現生樹の観察の2方面から行った。 (1)では、奈良県下明寺古墳群、同かん山古墳、静岡県午王堂山1号墳、同伊庄谷横穴群南谷支群17号墓、茨城県結城市結城作等で出土した木棺材の試料を採取し、プレパラートの作成等により観察を行った。(2)では、現生樹の樹高、樹径と木取りの関係に主眼を置きつつ、自生林におけるコウヤマキの天然植生についても実地に観察を行った。 近畿地方の木棺材ではコウヤマキの使用例を確実に蓄積した。一方、下明寺古墳群出土の組合式木棺はヒノキ科の材であることが判明し、昨年度同定を実施した長原古墳群SX015刳抜式木棺とともに、近畿地方の小規模古墳におけるコウヤマキ以外の材の使用例を加えることができた。 東海以東においてはヒノキ、スギ、ケヤキ、クスノキなど多様な材の使用が知られている。今回同定した伊庄谷南谷17号横穴組合式木棺、午王堂山1号墳木炭槨組合式木棺の材はともにスギ、結城作出土舟形木棺は広葉樹であった。現在までのところ、太平洋側におけるコウヤマキ製木棺の分布は静岡県西部、ほぼ牧之原台地以西に限られており、今回の同定結果はそれを追認するものである。こうしたコウヤマキ製木棺の分布様相はコウヤマキの天然分布とは見かけ上一致しておらず、今後より詳細な分布状況を把握することで、コウヤマキが選択的に使用された背景を考えるための重要な示唆が得られるものと考える。
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Research Products
(4 results)