2004 Fiscal Year Annual Research Report
太平洋戦争とメラネシアの都市-アメリカ軍の建設したキャンプ都市の歴史人類学的研究
Project/Area Number |
15520518
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉岡 政徳 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (40128583)
|
Keywords | 太平洋戦争 / ヴァヌアツ / 都市 / 土着主義運動 / アメリカ軍 / メラネシア / 歴史 |
Research Abstract |
本年度は、8月16日から9月10日にかけて出国し、ヴァヌアツ共和国でのフィールドワークを実施した。首都のポートヴィラでは、国立公文書館でルガンヴィル成立に関する歴史資料の検索を行うとともに、国立図書館で太平洋戦争当時のヴァヌアツが演じた役割に関する未出版の草稿のコピーなどを収集した。また、国立博物館をはじめ、ポートヴィラの各所で、昨年は見出すことのできなかった太平洋戦争時についてのヴァヌアツの人々の語りを記した図書をあるいはそのコピーを入手した。 一方ルガンヴィルには約2週間滞在し、ルガンヴィル在住の人々を対象に戦後のルガンヴィルの動向などについてインタビュー調査を実施した。また、太平洋戦争が終了したときにアメリカ軍が大量の物資などを投棄したルガンヴィル郊外のミリオンダラー岬や、サント島におけるカーゴカルトの流れを汲むナグリアメル運動の拠点であったファナフォ地区を訪れ、インタビュー調査を実施した。これらのインタビュー調査を通して、(1)メラネシア人は、アメリカ軍の中の特に黒人兵に対して親近感を持っていたこと、また彼らは、アメリカ軍の大量の物資投棄を驚きをもって見るとともに、投棄された衣類などを入手しそれらを再利用していた事実などが明らかになった。こうしたことがカーゴカルト再発につながったと考えられる。また(2)戦後、アメリカ軍が引き上げた後のルガンヴィルでは、戦前からプランテーションの労働者として働いていたベトナム人と、ポートヴィラからやってきた中国人の経営による商店、及び、バーンズ・フィリップ社とカンパニ・フランス社という二つの商社による商業活動が開始されることで都市機能が継続し、アメリカ軍のキャンプ都市からメラネシア人の集住する地方都市への転換が生み出されたことが明らかになった。 国内では、太平洋諸島地域研究所の図書館などで資料を収集するとともに、国内のオセアニア研究者との研究打ち合わせも実施した。
|
Research Products
(1 results)