2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530034
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Research Institution | NAGOYA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小畑 郁 名古屋大学, 大学院法学研究科, 教授 (40194617)
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Keywords | 近代国際法 / 外国人の地位 / 外交的保護 |
Research Abstract |
今年度は、7月に、1826年イギリス/メキシコ通商条約に登場した「完全な保護」条項の成立過程を詳細に跡づける「近代国際法における外国人の身体・財産の一般的・抽象的保護観念の登場」(研究発表欄参照)を公表した。ここでは、(1)司法運営についての内国民待遇が一般化するのは、1824年の合衆国/コロンビア条約以降であること、(2)この条約中の「特別の保護」および上記「完全な保護」条項は、身体・財産の保護を包括的に謳っているが、司法手続を通じた保護が専ら念頭におかれていたこと、(3)このように限定的な保障ですら一般国際法の反映ともそれになるべきものとも捉えられていなかったことが明らかにされた。 ついで、この条約以降の「完全な保護」条項の展開を追う作業をすすめた。そのため、イギリス、合衆国、フランス、オランダなどが締結した条約の網羅的検討をすすめ、短期間ながらイギリス国立公文書館での外務省文書の調査・研究を行った。その結果、このような条項は、19世紀未に至るまで、イギリスのみならずフランス、オランダなどヨーロッパ諸国がラテンアメリカ諸国と締結した通商条約において、ほとんど例外なく現れるものであることが確認された。研究者は、これらの条項の定式における微妙な揺れについてもその原因を突き止めようとしたが、それについては、関連性ある史料は発見できなかった。 本年度はまた、外交的保護の国家的性格にかかわる現代的問題として、日本の戦争処理諸条約における請求権放棄を取り扱った論文を発表した(研究発表欄参照)。
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