2003 Fiscal Year Annual Research Report
21世紀における国連平和維持活動の展望とその課題―活動原則の規範的展開と国連憲章システムへの再定位―
Project/Area Number |
15530035
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
酒井 啓亘 神戸大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (80252807)
|
Keywords | 国際連合 / 平和維持活動 / 国際法 / 国連憲章第7章 / 同意原則 / 自衛原則 / 国連安保理 / 地域的機関 |
Research Abstract |
平成15年度は資料収集を中心としながらも事例研究を進め、具体的にはコンゴ民主共和国に展開している国連コンゴ民主共和国ミッション(MONUC)と、第2次リベリア内戦を契機として現在も現地に展開中の国連リベリアミッション(UNMIL)について、それぞれの活動内容を検討した。これら2つの国連PKOは、ともに国連憲章第7章に基づく行動として国連安保理に承認を受けたものであることから、従来の国連PKOの活動原則である同意原則や自衛原則との関係が潜在的には問題となる事例であった。もっとも、MONUCもUNMILも、これに時間的に先行する国連シエラレオネミッション(UNAMSIL)などと同様に、関係当事者の同意を得て現地展開を開始しているのであり、その意味では関係当事者の同意を要するという意味での同意原則との抵触はさほど議論とはならない。むしろ、具体的局面で憲章第7章に基づく行動の一環として武力の行使を行うことによる任務の遂行が自衛原則との関係で問題をはらむものと認識される可能性があった。 しかし、武力行使との兼ね合いにしても、関係当事者が和平合意等で自ら憲章第7章に基づく措置を行使できるPKOの展開を望んでいたという事情を加味すると、自衛原則との抵触と単純化することは的を射ていない。当該PKOに先行して現地に展開していた地域的機関の平和維持軍が憲章第7章に基づく行動を許可されていて、そのマンデートを継承したという背景なども含めると、国連PKOに対する国際社会の要請として、安全面・人道面の観点から、「強化された(robust)PKO」の現地展開が望ましいとされている場合があることがこれら事例により明らかにされているのであり、こうした種類のPKOが従来型のPKOによって発展された活動原則とどの程度まで整合的に扱われなければならないかは、別途の考察を要する問題として提起されうるのである。これら問題は次年度の課題としてあらためて探求される予定である。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 酒井 啓亘: "コンゴにおける国連平和維持活動(1)-国連コンゴ民主共和国ミッション(MONUC)の実践とその法的意義-"国際協力論集(神戸大学). 11巻2号. 27-51 (2003)
-
[Publications] 酒井 啓亘: "コンゴにおける国連平和維持活動(2・完)-国連コンゴ民主共和国ミッション(MONUC)の実践とその法的意義-"国際協力論集(神戸大学). 11巻3号(未定). (2004)
-
[Publications] 酒井 啓亘: "第二次リベリア内戦における国連平和維持活動の展開-ECOMILからUNMILへ-"神戸法学雑誌. 53巻4号(未定). (2004)