2004 Fiscal Year Annual Research Report
就労形態の多様化に対応する包括的な労働法制のあり方に関する研究
Project/Area Number |
15530042
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大内 伸哉 神戸大学, 法学研究科, 教授 (10283855)
|
Keywords | 労働者 / 自営業者 / 労働保護法 / 使用従属性 / 人的従属性 / 経済的従属性 / 経済的リスク / 無償労働 |
Research Abstract |
昨年度は、自営業と雇用の中間的な就労形態において、法的な保護の必要性について検討し、その結果、経済的リスクという観点から、新たに「労働者」概念を見直すことができるのではないか、という分析視角を得ることができた。これまでは、経済的リスクの大きさは、労働者性を否定する要素と考えられてきたが、実際の要保護性という点では、経済的リスクが高い場合にみとめられることが多いので、むしろ経済的リスクの高さにどのような要素が加われば、労働者性を否定することができるのかの分析が必要であるという考察結果を得ることができた。 本年度は、昨年度のこうした分析結果をさらに発展させ、先進国の法制について情報を集めて、諸外国ではどのような議論を行われているかについて検討を行った。そこから明らかになったのは、欧州大陸法系の諸国では、労働者性の判断基準において「人的従属性」(日本法の使用従属性に相当する)を中心とする伝統を踏襲しており、労働者の定義に経済的従属性をふくめることに否定的であること(しかし、個別の立法などで非労働者にも保護を拡張している例も少なくなかったこと)、他方、アメリカやイギリスでは、労働者性の判断基準において経済的実態を考慮に入れるアプローチも採用されていること、である。 今後は、日本に近い法制をもつ欧州大陸法系諸国において、就労形態の多様化に対応するために、どのようなアプローチが模索されているのかを、より深く検討するつもりである。とりわけ、経済的に従属的な非労働者の保護のあり方という観点から検討を進めていく予定である。そして、この問題とについては、イタリアの最近の法律で、非労働者にも労働保護法の一部を適用する新たな制度が導入されていることから、その制度を深く考察する予定である。
|