Research Abstract |
就労形態の多様化に関しては,労働法上の保護を従属的な労働者(具体的には,人的従属関係のある労働者)にのみ限定するという伝統的な労働法上の考え方は,従属性の判断基準が判例上不明確であること,また実態として就労形態が多様化しており,従属性の有無がはっきりしない「グレーゾーン」の者が多いことから,妥当性に大いに疑問がある。こうした問題意識をもって,すでに昨年度,中間的な研究成果(「従属労働者と自営業者の均衡を求めて-労働保護法の再構成のための一つの試み」『労働関係法の現代的展開』47-69頁(信山社,2004年))を発表している。この論文では,労働法上の保護を人的に従属的な立場にある就業者にのみ限定することを批判し,立法論として,個人で労務を提供している者すべてに対して法的な保護を付与する可能性を検討している。具体的には,労働保護法の規定の中には,人的従属性に関係する規定と経済的従属性に関係する規定があり,前者については,かりに有償ではなくても他人の指揮命令を受けていれば適用されるべきであるとし(具体的には,ボランティアや家事労働者に保護を及ぼすべきとし),後者については,契約関係において実質的な対等性を欠け,それゆえに経済的従属性があると考えられる就業者には,たとえ人的な従属性が欠けていても,適用されるべきと主張した。しかし,この論文に対しては,人的従属性と経済的従属性との区別が明確ではないとの批判もあったことから,さらに研究を深め,労働保護法規は原則として,個人で労務を提供するすべての就業者に適用されるものとし,そのうえで,個々の規定の趣旨・目的に応じて,合意により適用除外を認めたり,あるいは行政機関や労働組合の立ち会いの下で適用除外を認めたりするなどの,多様な規制の弾力化とセットにするということが適切であるとの結論に至った。
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