2004 Fiscal Year Annual Research Report
医療・医学研究における人体の利用に関する倫理的法的諸問題の実証的・比較法的研究
Project/Area Number |
15530078
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
丸山 英二 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (10030636)
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Keywords | インフォームド・コンセント / ES細胞 / 遺伝子検査 / 健康保険 / 生命保険 |
Research Abstract |
1 平成16年度は,(1)組織・細胞等の研究機関や資源バンクへの提供やコホート研究の対象者となることに関するインフォームド・コンセント,(2)ES細胞および治療的クローン,(3)遺伝子診断・検査と差別、の問題について下記のような研究を行った。(4)組織・細胞等に対して認められるべき財産権・知的財産権については,見解の集約を最終年度に持ち越した。 2 (1)組織等の提供やコホート参加における説明同意文書に関しては,その性格・目的(例えば,契約書か,権利放棄文書か)に照らした保存期間,保存すべき書類などについて改めて検討する必要があり,さらに実態を調査した後に結論を出す。(2)ES細胞関係では,米国での議論を大統領評議会の報告書を参照しつつ検討した。わが国と同様の議論がなされている部分とより細やかな議論がなされている部分とがあったが,その議論が米国の政策に活かされていないことが惜しまれた。(3)遺伝子検査と保険の問題については,主として欧米の対応を素材として検討した。まず,保険に関しては,健康保険については,国民皆保険・医療保障が達成されている国とそうでない国とで民間保険の意味が異なるが,未発症者について遺伝情報による差別は禁じるが,既発症者の臨床情報や遺伝学的検査によらない家族歴などを考慮することは禁じられていないことが多かった。生命保険に関しては,ローンの確保に不可欠な点で,一定保険金額以下のものは生活必需品の性格を有する一方,健康保険に比べて,危険の高い者がその危険を秘匿して高額の保険を購入する逆選択の危険が高いことが指摘できる。そのことを踏まえると,一定額未満の保険契約に限って遺伝子検査の要請・結果の告知を求めないイギリスの対応は合理的だが,今後,精度の高い検査が多数出現した場合の問題は残っている。雇用や結婚の差別の問題は米国の障害者差別の理論で処理できそうに思われた。
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Research Products
(2 results)