Research Abstract |
平成17年度は,課題とした,(1)人体や臓器,組織等に対して認められる財産権・知的財産権,(2)倫理委員会,(3)インフォームド・コンセント(以下,IC),(4)臓器,組織等のバンク等,(5)個人情報の保護,などの主要な倫理的・法的諸問題のうち,(2)〜(5)については,平成16年12月に全部改正されたヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理指針,疫学研究倫理指針,臨床研究倫理指針などに照らして検討する作業にかなりの時間をかけた。とくに,全部改正の趣旨が,平成17年4月に全面施行の個人情報保護法の内容を指針に取り込むことであったため,その点に焦点が置かれた。研究の結果,各指針では,個人情報保護の要件がICの要件に加えて課されるが,両者の要件の関係が並列的,重畳的など場面によって相違すること,遺伝子解析研究について別個の指針を用意することの問題が,個人情報の保護規定を触媒として顕在化しつつあることが理解された。また,本年度は,他の数プロジェクトにおいてモニタリングをすることが求められ,研究の実態を把握する多くの機会を得た。なかでもICに関しては,指針の想定する研究協力者と現場の実態の乖離に対応する必要性が痛感され,ICの要件が有効に機能しない場面において,それに代わる正当性の保障枠組の必要性が明らかになりつつあるが,具体的なあり方については依然模索中である。バンクのあり方に関しては,個人情報保護の点で一方的匿名化の方法が有効に機能するが,匿名化による研究の質の低下が生じないようにするために,人的物的資源が追加される必要性が高いことが明確になった。倫理委員会については,中央委員会を求める声が強いが,最終的な信頼性を求めるべきよりどころの点で,それに危険が伴うことも否定できない。人体や臓器,組織等に対する財産権に関しては,知的財産権の方面からのアプローチを試みたが,不十分なものに終わり慙愧に堪えない。
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