2003 Fiscal Year Annual Research Report
インターネット普及によって改正の必要が生じた意匠法と商標法の新制度案に関する研究
Project/Area Number |
15530080
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
佐藤 恵太 中央大学, 法学部, 教授 (60205911)
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Keywords | 意匠 / 模倣 / ディスプレイ画面 |
Research Abstract |
本研究は、今年度は画面デザインの意匠保護に重点をおいて進められた。第一に取り組まれたのは、画面デザイン保護について、意匠法を改正して保護対象に取り込もうとする知的財産研究所案の理論的検討である。同法案は、画面デザインを意匠法に取り込み、定義を含む関連規定をどのように変更すればよいかというアプローチで検討をしている点、肯定的に評価すべき部分が多い。電子出願が認められている現状を考えれば、画面デザインデータそのものを出願対象とすることができるので、液晶画面の意匠登録適格を扱う審査基準設定の際に取りざたされた出願面での問題も生じない。がしかし、問題も存するように思われる。すなわち、無体物を新たに保護対象として取り込む点に積極的であるが、なぜ画面デザインに限定されるのかという点の説明がない等、体系的な検討がやや不足であるし、カスタマイズ機能をいかに位置づけるか、動的意匠の出願にポップアップ広告の機能を組み込むことの実現困難性(ポップアップ広告の図柄等は、契約関係により変動し得るが、どこまでを類似とするか、またはポップアップ広告がはめ込まれる部分というような図柄不特定の出願を認めるか)等の検討がなされていない。そのような意味で、まだ知財研法案は検討が不足していると思われる。今後は、このような点を改善した修正案を準備することが課題となろう。第二に取り組まれたのは、インターネット特有の機能を使った種々の映像・画像関連技術の実例の収集である。特に、種々のカスタマイズ機能に焦点を絞ったプロダクト例の収集が試みられた。カスタマイズ機能の提供が、画面デザインといえるのか、という点については、有体物に保護対象を限定していた既存の意匠法では考え得ないシチュエーションであり、十分な検討が必要と思われるため、素材の収集が肝要と思われるためである。第三に、音・においの商標に関する基礎文献の収集を行った。残念ながら、電子出願という状況変化に対応する各国実務の資料が得られなかったが、音やにおいを電気信号に置き換える手法によって登録の手段が技術的に大きく変わることを念頭においた検討が不可欠であるように思われ、今後の課題としたい。
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