2004 Fiscal Year Annual Research Report
インターネット普及によって改正の必要が生じた意匠法と商標法の新制度案に関する研究
Project/Area Number |
15530080
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
佐藤 恵太 中央大学, 大学院・法務研究科, 教授 (60205911)
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Keywords | 意匠法 / 商標法 |
Research Abstract |
本研究は、意匠法と商標法の2領域のそれぞれについて、インターネット技術進展に応じた法改正案を模索するものである。具体的には、3分野を選んで検討した。すなわち、意匠分野から、(1)コンピュータや携帯電話のダウンロード画像の意匠保護の可能性を、商標分野から、(2)「かおり」の商標の保護適格性、(3)商標の検索エンジンにおける使用、以上の3分野を取り扱った。研究は、(1)から(3)の各分野について、1)諸外国(先進国)の立法例、裁判例等を収集する、2)諸外国の傾向とマッチするような改正方向性の検討、を行ってきた。 第一の意匠法については、携帯電話用画面のダウンロード画像や、コンピュータディスプレイに示される画面のデザインを、意匠法の保護対象とする可能性がないかを検討した。アメリカ特許法や、欧州デザイン保護レギュレーションに保護例があることは確かめられたが、いずれも権利行使の際にどのようになるのかが不明確であり、参考にならなかった。そこで、むしろ、理論的分析にターゲットを変更し、物品(有体物)の形状等についてのデザインとの比較を中心に検討を行って、意匠の保護対象として、ディスプレイに表示する目的で捜索された画像データを「意匠」とみなす、等、いくつかの条文改正の可能性を提示した。しかし、当初の検討対象に予定していた審議会報告がいまだだされておらず(平成17年6月に次の小委員会が予定されている)、十分な検討となっていない部分が残されている。 第二の「かおり」の商標は、諸外国の法制を調査して、英米等に一定の登録例があることが確かめられた。しかし、「かおり」を電子データに翻訳するという技術が実用化されることを前提として、その方式による出願等を想定した例はないようであり、この部分では、理論的分析にとどまる結果となったが、一定の提案をまとめるに至った。 第三の検索エンジンによる使用は、メタタグにおける他人の商標と同一の文字列の使用が商標の使用になるとするアメリカ合衆国裁判例と、それに対するアメリカの研究者の反対論などを検討し、これが、検索エンジンの検索ワードや、検索結果の順位を上位にあげる契約の有効性等を検討した。特に、後者の問題については、研究の機関終了間際に、キーワードバイと呼ばれる領域の重要裁判例がアメリカ合衆国とフランスにおいて公表され、結論が異なるという事態になっていることが明らかとされ、分析を進めた。
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