2003 Fiscal Year Annual Research Report
医療における自己決定権に関する研究-フランス法における医療公序と個人の自律-
Project/Area Number |
15530083
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
大河原 良夫 福岡工業大学, 社会環境学部, 助教授 (70341469)
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Keywords | パーソン / 身体の統合性 / インフォームド・コンセント / 医行為 / 自己決定権 / 公序 / 医ヒューマニズム |
Research Abstract |
本研究(15〜16年度)の全体構成は、第1部「身体」不可触・不可傷性(integrite physique)の原理-患者の身体の保護、第2部「承諾」(consentement)原理-患者の承諾(意思の尊重)、第3部「説明」(information)原理-医師の説明義務である。 研究初年度の15年度は、本研究・全三部構成のうちで、まず第1部の基盤的な研究を行うことであった。 後述11・研究発表記載の雑誌論文は、このための序論的位置づけとなるものとして書かれている。 ここでは、まず、「インフォームド・コンセントとフランス法」において、わが国が範としてきた英米法ではなく、インフォームド・コンセント観念の根底に横たわる価値として身体保護の原理を据えるフランス法に着目して、身体を傷つけることと自己決定権の関係を論じている。次に、「フランス医事法学と『ヒューマニズムに対するフォート』-医療ヒューマニズム」において、そのフランス医事法学は、英米法流のインフォームド・コンセント観念をもたないが、医師と患者の関係について、患者をpersonneとしてみてその意思を尊重することを、ヒューマニズムに対する義務とすることの中に、そのような考え方をもっていることを見、その発展が法典化に到達したことを論じた。最後に、「身体不可触・不可傷性の尊重-その一般原理(根本問題)」において、上で述べたような法原理が、法典化するに至るまでの、フランスの伝統的な学説と判例の展開を眺め、身体不可触・不可傷性の原理と患者の承諾(同意)の原理の確立過程を概観した。 これによって、研究目的、即ち、インフォームド・コンセントについて考える場合、何よりもまず、身体不可傷性の原理と自己決定権との関係について検討することが不可欠であるとの観点から、英米法とは違って、フランス法では前者の優位が前面に出てくること、そこからインフォームド・コンセントの現われ方に違いが出てくること、を原理的に判例・学説を通してほぼ明らかにすることができた。まだ不十分な点は残されているものの、来年度は、それをも補いつつ、本年度に引き続き、次の研究計画に取りかかるものである。
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Research Products
(1 results)