2004 Fiscal Year Annual Research Report
医療における自己決定権に関する研究-フランス法における医療公序と個人の自律
Project/Area Number |
15530083
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
大河原 良夫 福岡工業大学, 社会環境学部, 助教授 (70341469)
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Keywords | 自己決定 / 公序 / 個人の自律 / フランス法 / 医療 / インフォームド・コンセント / 身体の不可触・不可傷性 / 説明と同意 |
Research Abstract |
本研究は、インフォームド・コンセント(IC)の根底に横たわる価値を探究する基礎研究を遂行し、「身体」不可触・不可傷性の原理と「同意」「説明」原理の関係を考察することが主眼であった。まずICについて考える場合、何よりも身体不可傷性の原理と自己決定権との関係でどう位置づけるかが問題であった。この問題解明こそがICの根拠を明らかにする上で不可欠であるから、判例・学説を分析することによって、英米法とは違って、フランス法では前者の原理の優位が前面に出てくること、そこからICの現われ方に違いが出てくることを原理的に明らかにすることができた。この点は、医療の実情によく似たわが国にとって有意義である。次の問題は、その具体的適用の場面で憲法・刑法・民法等との関係で、身体不可触性・不可傷性の原理、同意原理が、それぞれどのように適用されてきたかであった。ICの具体的適用の場面で、美容整形・性転換手術、人体実験、臓器移植等について判例・学説を通して、とりわけ同意・説明義務の強化事例として、美容整形、臓器移植、バイオメディカル実験研究等の問題を取り上げた。実際、通常医療において、同意原理も説明原理も、その妥当の範囲においても程度においても、英米法と変わらない結果が得られたと思われる。ただ、注意しなくてはならないのは、患者の同意よりも、むしろ患者の治療利益の有無を厳格に問うフランス法の判例伝統(患者の同意は不可欠だが、それだけでは十分でない)の存在であり、同意が決定的だとする近年の生命倫理立法によるその修正の意義が問われなければならない。以上、従来なかった着眼点からアプローチすることで、医療・生命倫理と法に関する研究の進展に多少とも貢献できたのではないかと思われる。また、今回の研究の結果、治療の利益ないしは治療目的と同意の関係如何という研究課題が新たに生まれ、これに、同意原理・説明原理そのものの研究を加えて、追究するのが次の研究課題である。
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Research Products
(1 results)