2004 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における国際社会観と社会ダーウィニズムの影響に関する政治思想史的研究
Project/Area Number |
15530095
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Research Institution | RIKKYO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
松田 宏一郎 立教大学, 法学部, 教授 (50222302)
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Keywords | 社会進化論 / ナショナリズム |
Research Abstract |
本年度は、西洋および中国のSocial Darwinism論についてケンブリッジ大学図書館を中心に英国での調査をおこない、中国・日本・朝鮮を比較しにおける議論の比較検討と研究成果のまとめをおこなった。従来通説的には、東アジアにおける社会進化論的主張に対して、西欧のコント型実証主義的歴史観およびダーウィニズム的進化史観が混然となって、単線発展的な文明論を形成し、それが先進国への経済的軍事的キャッチアップを重視する国際社会認識の基礎をなしたとする性格付けが支配的であったが、実際にはコント主義における人類の知的発展を強調する知的エリーティズムと、よりスペンサー的な個人間の競争的契機を重視する自由主義的主調はしばしば齟齬をきたし、また競争を発展の契機として重視する場合も、その基礎単位を個人とするか集団とするかではまったく異なる政治的意見を形成した。そういった政治的意見の多様性と相互の対立は、19世紀後半の東アジアにおける国家と社会の関係に関する思想的な多様性と対立軸の形成に明らかに強く作用している。また、日本において、明治期の社会ダーウィニズム受容が大正期以降批判的に継承され、特に植民地統治の統治論理を構成する際に一定の痕跡を残している。大正期以降、ある意味で素朴な進化論的文明論は批判されていくが、社会の内部に知的なリーダーシップが十分にそだっていないように見える場合に、それは権力による政策的誘導によって対処可能なのか、あるいは、社会の中に十分に競争的ダイナミズムが機能することによって克服可能なのか、といった形で議論は展開していき、やがて、都市化・産業化による日本の社会的不安定を論じる際に、さらには日本の植民地統治の有効性を論じる際にその論理構成の基礎となった。 研究成果の一部は、6月のオーストラリア・アジア研究学会(キャンベラ)および12月の韓国政治学会(ソウル)で発表した。
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