2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530105
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
小久保 康之 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (60221959)
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Keywords | EU / 拡大 / キプロス共和国 / 北キプロス・トルコ共和国 / キプロス問題 / トルコ / ギリシャ / 東地中海 |
Research Abstract |
本年度は、EU拡大の「効果」を検討するケース・スタディとしてキプロスのEU加盟問題を取り上げた。すなわち、1974年以来南北に分断されている「キプロス問題」の解決に向けて、キプロスのEU加盟による紛争解決効果が見られるかどうかについて中心的に分析を行った。国際的に承認されているキプロス共和国(南キプロス)が、冷戦後の1990年7月にEUに加盟申請を提出して以来、「キプロス問題」の解決が同国のEU加盟への事実上の前提とされ、「キプロス問題」の解決がキプロス共和国のEU加盟へのブレーキとなってきた。しかし、1997年以降、ギリシャがEUの東方拡大を承認するかわりにキプロスのEU加盟を認めるよう圧力を掛け始めたことを契機に、EUはキプロスをEUに加盟させることによって「キプロス問題」の解決を促すことを期待するようになり、また同時に北キプロスを唯一承認しているトルコに対して、「キプロス問題」の解決を同国のEU加盟に向けた1つの政治的条件として提示するようになった。その結果、キプロス共和国は、「キプロス問題」の解決を待たずしてEUへの加盟を認められ、2004年5月1日に正式にEUに加盟することになったが、同時に北キプロスにおいても、EU加盟を支持する政治的動きが活発になり、「キプロス問題」解決に向けての交渉が国連を仲介として再開されるに至っている。また、「キプロス問題」を解決するためには、EUはトルコのEU加盟を現実問題として考慮せざるを得なくなっており、キプロスのEU加盟を契機として、「キプロス問題」、トルコのEU加盟、トルコ・ギリシャ関係という東地中海の非常に複雑な問題解決に向けて前進が見られる。もし、東地中海の動向がそのような形で安定化に向かうとすれば、それは正にEU拡大の「効果」であると考えられる。
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Research Products
(1 results)