2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530105
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
小久保 康之 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (60221959)
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Keywords | EU / 拡大 / 欧州近隣諸国政策 / EU加盟交渉 / トルコ / 欧州国際政治史 / 欧州統合 / EC |
Research Abstract |
本年度は、研究計画の最終年度であることから、EU拡大の歴史を整理し、拡大による「効果」を抽出することを試みた。1973年の第1次拡大においては、英国、デンマーク、アイルランドの加盟により、EC経済圏の拡大が、1981年のギリシャの加盟および1985年のスペインとポルトガルの加盟(第2次および第3次拡大)では、民主主義国家の西ヨーロッパ地域での確立が主たる「効果」として指摘できる。さらに、1995年のオーストリア、スウェーデン、フィンランドの加盟(第4次拡大)により、EU経済圏は一層拡大すると同時に、冷戦後に中立国が加盟したことにより、EUが西側の経済組織として位置付けられていた冷戦期と対比して、冷戦後は欧州大陸全体の秩序構築の要として位置付けられる「効果」が挙げられる。このようにEU拡大は、経済的繁栄の拡大という「効果」と民主主義と平和の確立という「効果」の2側面を併せ持つプロセスであることが歴史的に指摘できる。その2重の効果は、第5次拡大でも顕著に表れており、中・東欧の8カ国および地中海の2カ国が2004年に加盟したことは、欧州大陸全体に経済的繁栄のみならず、自由、民主主義、基本的人権の確立による政治的な安定を供給するものであることが期待されている。但し、急速な拡大がEU統合のモメンタムを減速させる危険性も同時に指摘され、2004年10月に開始されたトルコの加盟交渉に対して否定的な見解が多く見られることや欧州憲法条約がフランスとオランダの国民投票で否決されたことは、EU拡大のマイナス面での影響を示すものと言える。また、EUの欧州近隣諸国政策(ENP)は、EU加盟と同様の「効果」を、EUに加盟させずに周辺諸国に実現する手段として今後の行方が注目される。以上のようにEU拡大の政治的・経済的「効果」の全体像を提示することができた。
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Research Products
(2 results)