2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530108
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
池上 佳助 東海大学, 文学部, 助教授 (40307294)
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Keywords | 国際関係史 / 冷戦史 / 北極圏 / 勢力圏分割 / 国際情報交換 / ノルウェー:デンマーク:アイスランド |
Research Abstract |
1.昨年度は、第二次大戦末期の1944年にソ連から提起された、北極海に位置するノルウェー領スヴァールバル諸島の共同軍事防衛問題を、主としてノルウェーおよびソ連の外交文書に依拠した二国間関係の視点から分析を行ったが、今年度はこのスヴァールバル問題を米ソによる戦後の欧州秩序構想と絡めながら、北極圏における勢力圏分割という視点で捉え直し、再検討を行った。このため米国、デンマークおよびソ連の一次史料を新たに調査対象に加え、分析を行った。 2.従来のノルウェーにおけるスヴァールバル問題研究は、ソ連側史料の制約の問題もあり、ノルウェー・ソ連政府間の外交交渉の推移、ノルウェー政府内の対応策立案の過程を分析したものが中心であったことから、ソ連政府よる唐突な問題提起、ソ連に有利な状況下での謎の沈黙、尻すぼみの感のある結末の理由が必ずしも明解ではなかった。本研究により、スヴァールバル問題が、ソ連邦近接領域における経済権益および供給ラインの確保という当初のソ連の狙いから、1946年以降、欧州大陸部でのソ連の膨張主義的政策に反発し、対ソ強硬姿勢に転じたトルーマン政権によるグリーンランド・アイスランドの米軍基地網構築の動きへの対抗、つまり米国の北極圏への勢力圏拡大を阻止するための駆け引き材料に変質していったことが明らかになった。このことは欧州「周辺」の北極圏が、欧州「中心」部での冷戦の展開と密接に連動し、米ソの冷戦構造に組込まれていった過程を示している。 3.上記に関して、2004年6月12日、明治学院大学で開催された北ヨーロッパ学会において研究報告を行ない、その内容を論文「北極海をめぐる冷戦の展開-スヴァールバル問題を中心に」にまとめ、東海大学文明研究所の研究誌『文明』の第5号および第6号に発表した(第5号は2004年10月、第6号は2005年3月発行)。
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Research Products
(2 results)