2005 Fiscal Year Annual Research Report
不確実性下の設備投資関数に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
15530122
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 保 神戸大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (00237413)
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Keywords | 設備投資 / 不確実性 / GARCHモデル / 危険回避 / 不確実性回避 / ナイト流の不確実性 |
Research Abstract |
一昨年度構築し分析した「非期待効用(Non-Expected Utility)」を導入した連続型の設備投資モデルから得られた結論の経済学的意味合いを明確にするために、設備投資と同時に金融的投資を考慮した不確実性下の家計の動学的最適化行動を導入したマクロ経済モデルを構築し分析を行った。その結果、不確実性下においては異時点間の代替の弾力性が危険回避度とは大きく異なる役割を果たすこと及びその直感的かつ経済学的な含意が明らかになった。 理論面でのもう一つの課題であった不確実性回避と危険回避が不確実性下の設備投資に与える影響についても、昨年度構築したナイト流の不確実性(Knightian Uncertainty)を組み込んだ確率的投資モデルを用いてさらなる分析を行い、ナイト流の不確実性の大きさ(不確実性回避)が大きければ、不確実性の増大(平均保存的分散の拡大)が投資を減少させることが明らかになった。 実証研究においては、まず、日本の製造業全体及びその中のいつかの代表的な産業について売上高・設備投資・資本ストック等のデータを収集し、その整理・加工を行った。理論分析においては需要及び価格の不確実性を想定しているので、実証研究では売上高の分散を不確実性の尺度とし分析を行った。具体的には、GARCH(1,1)モデルで売上高を推定しその条件付分散を不確実性の尺度として捉え、売上高の予測値及びその分散を説明変数として投資関数を推定した。 その結果、売上高の成長が遅い時期には設備投資と不確実性の間に明確な負の相関関係が現れるが、成長が早い時期についての分析からは必ずしも明確な負の相関関係は得られなかった。成長が早い時期には不確実性を回避しようという誘因が小さくなると解釈すれば、この結果はナイト流の不確実性の不確実性を導入した理論モデルとの結論と整合的であることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)