2004 Fiscal Year Annual Research Report
森林保全と流域社会ネットワーク:矢作川流域ネットワーク形成の事例研究
Project/Area Number |
15530161
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
上田 良文 広島大学, 大学院・社会科学研究科, 教授 (50106788)
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Keywords | 流域コモンズ / 社会ネットワーク / Collective Action / 公共財 / 外部性 / 社会起業家 / 森林 / 選択的誘引 |
Research Abstract |
矢作川流域社会ネットワークは、矢作川流域住民が自らのコスト負担で流域コモンプールを保全しようとする自発的な社会実験である。伝統的な公共財理論と外部性理論のコンセプトを用いて説明するならば、この社会実験は「公共財の自発的供給システムに基づいて外部性の内部化を目指す」試みであると言えるかもしれない。しかし、このような伝統的な概念に基づく論理にはCollective Actionの視点が欠けており、協調行動に伴うフリーライダー問題を克服する論理としては不十分である。140万以上の流域受益者住民のネットワークは、大規模集団であるにもかかわらず、その協調行動の組織化が可能であるためには、その前提条件として「選択的誘引(Mancur Olson,1965)」が与えられていなければならない。本研究はこのようなオルソン命題が「矢作川流域社会ネットワーク」にも成立する事を、現地調査とアンケート調査によって明らかにすることを目的とするものであった。研究プロジェクトの初年度において下記の仮説を確認した:(1)ネットワークが組織されたのは、その母体である「明治用水改良区組合」と「漁業組合」の存在が不可欠であること、(2)各母体組織は「選択誘引」に基づいて組織されたていたこと、そして、これらの組織に依拠して、かれらの集合財である流域コモンプールに対する自発的な保全活動が組織された。次の16年度には、流域コモンプールが生み出す共通利益の大小が協調行動に及ぼす影響を明らかした。主要な結果は以下の通りである;(4)河川や沿海の保全活動に比して、とりわけ森林保全活動が不十分であるのは、その保全活動の便益が保全コストに比して小さい状態にあるためであること、(5)このような森林便益の相対的過小を補完するには、エコ商品のような新たな選択的誘引を起業化することが有効であること。 研究結果は、森林保全における社会起業家の役割と、その人材教育の重要性を確認するものである。
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Research Products
(4 results)