2006 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本における非典型労働者の「就労意思決定」の規定要因に関する実証的研究
Project/Area Number |
15530178
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
倉田 良樹 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (60161741)
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Keywords | 非典型労働者 / 正社員登用 / プロフェッショナリズム / 均衡処遇 / 雇用政策 |
Research Abstract |
1.平成17年度に実施した「労働者意識に関する日本・スエーデン共同アンケート調査」の集計および国際比較分析を行い、日本の若年非典型労働者の中に、職業意識の点で未成熟な人々ばかりでなく、一定のプロフェッショナル意識を有するグループが存在すること、非典型労働者においても転職経験にともなう職業意識の成熟化傾向が見られること、こうした傾向に関しては、属性別に見ると、年齢や性別よりも学歴の影響が大きいこと(高学歴者ほどプロフェッショナリズム志向が高い)が明らかになった。 2.平成16年度までに本研究で蓄積してきた、日本の非典型労働者(流通分野および介護サービス分野)の就労実態及び就労意思決定に関する調査データを再集計し、非典型労働者の就労に関して様々な角度から分析を行った。この中で、典型雇用労働者と非典型雇用との間の職場秩序は、企業の労務管理や労働法制、税制などの外在的要因だけにより規定されているのではなく、職場における日常的な相互行為の繰り返しの中で生まれる自生的秩序形成という要因が強く作用していることが明らかにされた。この点は従来の通説には見られなかった新たな発見であり、今後の労働研究の発展に貢献しうる可能性がある。 3.日本の非典型労働者の職業安定行政について資料の収集分析と若干の当事者ヒヤリングを行った。ヒヤリングに当たっては、上記1,2の調査結果から得られる日本の均衡処遇政策に関するインプリケーションを説明し、これに関する各人のオピニオンを聴取した。現行の「均衡処遇政策」については、規定の暖昧さから大きな効果が期待できないこと、企業の労務管理に関しては、正社員登用を督励する政策が有効であるとの結論が得られた。
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