Research Abstract |
本研究では,グローバリゼーションと地域経済統合が同時進行する現代世界経済の特徴について,問題を整理し直し,グローバリゼーションとリージョナリズムの間の補完・緊張関係について明らかにする.その際,最も先端的な地域経済統合体であるEUにおいて活動している日系多国籍企業を題材に,具体的な実証研究を行う. 平成15年度前半には,研究インフラを整備するためにパソコン,EU,多国籍企業,対象産業関連の文献購入,データの整理などを進めた.さらに,EUに進出している日系企業の本社のインタビューを行った.さらに,9月にはそれらの企業の欧州統括本社などへのインタビュー調査をするとともに,London大学のO.Janne博士とも面談し,相互の研究についての議論を行ってきた. 10月以降は,収集したデータの分析を行い,成果発表のための準備を進めている.具体的には,日系自動車企業がイギリス工場を設立し,その操業が10年以上を経てくる中で,イギリスの自動車産業,輸出,そして,部品貿易に如何なる影響をもたらしてきたのか,という論点についてまとめた.そこでは,日系企業の操業により,イギリスの自動車生産と対EU輸出の回復が見られると同時に,大陸からの部品輸入も拡大し,自動車部品貿易収支の悪化が見られることを確認した.その背景として,EUの市場統合やイギリスのユーロ不参加問題が,一定の影響を及ぼしていることが示された.この成果を雑誌Transnational Corporationに投稿したが,その修正を求められており,現在はその作業に入っている. 平成16年度には,先の投稿原稿の修正と並んで,在EU日系多国籍企業のより包括的な研究を進め,成果を発表する予定である.
|