2004 Fiscal Year Annual Research Report
国際金融資本市場における開発途上国の借入条件および起債条件の規定要因に関する研究
Project/Area Number |
15530206
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
井上 久志 北海道大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (00261272)
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Keywords | 国際金融 / カントリーリスク |
Research Abstract |
分析結果は以下のように纏められる。(1)債券と銀行融資のspreadの規定要因は大きく異なる。liquidity and solvencyまたmacroeconomic fundamentalsに関連する変数については,規定要因としての共通性は見られない。(2)債券と銀行融資のspreadの規定要因として,それぞれの他の発行条件,つまり金額や満期限については,統計的有意性が確認できなかった。(3)マクロ経済などの変数に限れば,債券のyield spreadの説明としては,モデルの決定係数が高かったのに対し,融資のspreadの説明では全く統計的な有意性は確認できなかった。(4)債券の内訳としてのsovereign bond, other public bond, private bond,さらに融資の間の相互関連を,spread,資金フローなどから捉えるとその関連性は比較的弱く,それぞれの市場は独立的である。(5)債務不履行実績との関係で言えば,債券のyield spreadの中では殆ど考慮されておらず,逆に銀行融資のspreadには強く反映されていることが確認された。(6)借手の地域性もspreadを規定する重要な変数である。中南米諸国では,他の地域に比べ追加的なリスク・プレミアムを要請されている。(7)所得分布で見ると,低所得国のリスク・プレミアムは,債券(sovereign)において相対的に低いことが知られた。融資のspreadに関しては所得水準別の格差は相対的に不明瞭なものであった。(8)カントリーリスク評価機関の評価は,sovereign bondや融資のspreadにある程度反映されていることが確認された。(9)債務国側から見ると,債券や融資のコスト引き下げのためには例えばインフレ抑制政策を重視すること,債務の長短期間バランスに配慮すること,デット・サービス・レシオをコントロールすることなどが重要である。
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