2004 Fiscal Year Annual Research Report
世代会計の動学化による財政改革の効果の検証に関する研究
Project/Area Number |
15530209
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 浩 東北大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (60275823)
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Keywords | 少子化 / 高齢化 / 年金改革 / 世代間不均衡 / 財政赤字 / 世代会計 / 世代重複モデル / 政府債務 |
Research Abstract |
本年度は、少子・高齢化がもたらす世代間不均衡を緩和するための政策的手段として、以下の2つを検討した。 第1は、行政活動の効率化等を通じた政府支出と政府債務の削減である。 本研究では、特に地方分権のさきがけとなっていると考えられている改革派知事の役割について焦点をあてた。地方分権、地域自立の条件としてearned autonomyの考え方のもと、当該知事が首長となっている府県とそれ以外の都道府県で、歳出、地方債残高の変化率と金額、人口の社会増減、民営事業所の選択の面から違いが認められるかについて統計的な検証を行った。 結果では、全てにおいて改革派知事ダミーは有意に推定されず、改革派知事であることが地方自治体の経営、地域運営の面において他の地域と大きく異なる結果をもたらしていることを確認できなかった。 すなわち、システマティックな制度作りなしに、首長だけの交代では行政改革、財政改革は困難であることが明らかとなったことになる。 第2は、出生率の低下に対する政策的介入を通じ、少子・高齢化が進行することを緩和し、世代間不均衡の解消を期することを検討した研究である。 本研究では、高齢化問題のうち、少子化・晩産化に焦点をあて、都道府県別のマクロのクロスセクションデータに基づき実証分析を行った。 経済学的なフレームワークとして、世帯の最適化行動から導き出される子供に対する需要を分析した。特に、少子化問題に公共部門が介入するべきであるかという公共政策の観点からは、賦課方式型の公的年金制度の下では、各世帯にとって望ましい子供数と社会全体にとって望ましい子供数との間に乖離が生じ、子供数が過少になってしまうことを明らかにした。また、子供を下級財と定義せず所得効果が大きいとしたもとでも、保育所などの利用可能な育児サービスに供給制約がある場合には、最適な資源配分と子供数が実現されず、世帯にとっても厚生損失が生じていることなどが示された。
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