2005 Fiscal Year Annual Research Report
世代会計の動学化による財政改革の効果の検証に関する研究
Project/Area Number |
15530209
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 浩 東北大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (60275823)
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Keywords | 世代会計 / 財政改革 / 高齢化 / 世代間公平 |
Research Abstract |
本研究の目的は、財政改革の影響を最も適切に表すといわれる世代会計の手法を用いて財政改革の効果を定量的に検証することである。 本年度の研究では、社会保障制度が充実し、世代間移転の規模の大きな北欧諸国のうち、ノルウェーの世代会計結果と日本の世代会計結果および、世代会計の政策形成における利用状況について調査を行った。その結果、 1 ノルウェーの世代間不均衡の規模は、値の上では日本の結果よりも大きいが、将来世代の支払いの絶対額ではさほど問題ではないこと、 2 男女間の差異が大きい理由として、女性の就業率が低く、かつ寿命が長いことによる低負担・高受益が影響していること、 3 ノルウェーの特殊性として北海油田からの収入が上げられるが、当局にはその収入には長期に依存できないという問題意識があること、 が明らかとなった。 また、動学的評価のため、経済成長率や利子率を変更した場合の結果に関する評価も行った。標準的な世代会計では、割引率に用いる利子率を5%、経済成長率を1.5%としている。しかし、年金再計算の前提を用いた、利子率2.2%、経済成長率1.1%の場合では、世代間不均衡は小さく推計されている。この推計結果について、仮定された経済成長率で推計されたGDPに対する政府債務という指標で検討した。その結果、利子率や経済成長率を変えて世代間不均衡が小さく推計される場合でも、政府債務のGDP比率で見ると必ずしも政府債務は軽減されたわけではなく、政府債務の資本蓄積に及ぼすネガティブな影響は依然として大きいことがわかった。
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