2003 Fiscal Year Annual Research Report
鉄道時代における英国土地貴族の所領経営・家産管理と企業者活動に関する研究
Project/Area Number |
15530236
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
阿知羅 隆雄 滋賀大学, 経済学部, 教授 (50212527)
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Keywords | イギリス;バロウ・イン・ファーニス / デヴォンシア公爵 / イギリス大土地所有貴族 / 産業帝国 / 所領経営 / 資本の地域支配 / 土地所有の地域支配 / 資本=土地所有コンプレックス |
Research Abstract |
(1)平成15年度科学研究費補助金は追加採択分に関連して執行期間が比較的短期になったために、海外調査による資料収集とそのためのIT環境の整備に限定せざるを得なかった。 (2)平成2月9日から23日の2週間で海外調査を実施した。それは英国カンブリア県に所在するCum-bria Record Office (Barrow-in-Furness) (140 Duke Street, Barrow-in-Furness, Cumbria, LA14 1XW, England)における資料収集が主たるものである。収集資料は、1867年に設立された自治都市Barrow-in-Furnessの市議会議事録を中心とするものである。議事録は、設立当初から1890年までが手書き資料の形態で5分冊に製本され所蔵されている。収集したのは、うち4分冊分で、1867年から1889年4月2日に開催された特別議会までの議事録である。それは、月例議会及び特別議会の様子を詳細に伝えるもので、本文計1952頁、差し込み資料等77頁に及ぶものである。同文書館で収集した他の資料には、土地販売告示資料(1854年)、市議会関連新聞記事(1887-1896年)、地方政治風刺画(1886-9年)等がある。 (3)入手は、600万画素の一眼レフ・デジタルカメラでの撮影によるものである。撮影はノート型パソコンとの連結によりカメラ内蔵メモリの限界を克服し、実施された。渡航前に、高性能パソコンを購入し、画像処理のためのIT環境の整備を行った。 (4)利用可能形態への画像処理及び目録作成と並行して行う資料分析作業は16年度の課題となるが、入手資料は、1846年のファーニス鉄道開通後、急速な発展を遂げた新興の工業都市における都市共同業務を地方政府がどのように担ったのか、またそのことが当該地域を支配する「産業帝国」の利害、また所領経営の延長線上の利害により工業化を先導し「産業帝国」を支配するに至ったデヴォンシア公爵家の土地所有独自の利害とのどのように関連したのかを示す何ほどかの手掛かりを与えるものと思われる。すなわち19世紀イギリスにおける「資本の地域支配」と「土地所有の地域支配」との関係やそのコンプレックスを示す史実の発掘が期待される。
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