2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本企業の人的資源管理における個人情報の非対称性と粘着性に関する調査及び研究
Project/Area Number |
15530258
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
平野 光俊 神戸大学, 経営学研究科, 助教授 (10346281)
|
Keywords | 日本型人事管理 / アメリカ型人事管理 / 能力主義 / 職務主義 / 個人情報の非対称性 / コア人材 / 個人情報の非対称性 / 自律型キャリア開発 |
Research Abstract |
日本的人事管理の特徴は、1)長期雇用関係、2)人(能力)主義のランク・ヒエラルキー、3)人事部主導のキャリア開発である。しかし近年の変化は、昨年実施した10社の人事部長へのインタビューから、次のようにまとめられる。1)長期と短期の雇用関係の組み合わせ、2)職務・役割主義のランク・ヒエラルキーへの転換、3)ライン主導のキャリア開発である。その際、社員のキャリア開発において、本社が個別管理する一部の経営者候補人材とラインにキャリア開発を委ねるふつうの人材の二極化が進んでいる。前者には次世代リーダー候補の早期選抜育成が、後者には自律型キャリア開発を支援する施策(社内公募制度、選択型教育研修、キャリアカウンセリングなど)が準備される。つまり近年の人事管理の変化は社員に主体的なキャリア自律意織を要請するようになっている。本年度は、これらの発見を基礎にして、アンケート方式の大量サンプル調査を実施した。対象は上場製造業1108社の人事部長である。結果、275社の回答を得た(回答率24.8%)。見出されたことは、日本企業の人事管理は、これまでの社員格付けを能力主義で構造化する職能資格制度、および人事権の本社集中化の組み合わせから、職務主義で社員の序列を構造化する職務(役割)等級制度、および人事権の本社集中化に進化的に変化している。その際、業績(営業利益、営業利益率)に対して、前者の人事管理制度を採用している企業は業績が悪く、一方、後者への転換が、業績が高めうることを明らかにした。同時に、職務主義への転換は、人事部とラインの社員の個人情報の保有格差を高めるから、人事部はその対策として、コア人材の個別管理(サクセッションプランなど)と、社内公募制度やFA制度が導入する。また、職務主義への転換に応じて、これらの施策の導入を積極化する企業のほうが、業績がよいことが明らかになった。
|