2003 Fiscal Year Annual Research Report
企業価値評価モデルに適合した会計情報の公開制度に関する実証研究
Project/Area Number |
15530302
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
桜井 久勝 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (10127368)
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Keywords | 企業価値 / 知的財産 / 財務報告 / ブランド / 会計情報 |
Research Abstract |
企業価値評価に際して、特許権や商標権に代表されるような知的財産の価値情報が決定的に重要になりつつあるといわれるが、この点に関する会計情報の公開制度はいまだ黎明期にある。したがって財務報告の制度設計を今後に推進するには、多くの科学的な実証分析が必要とされる。なかでも重要なのは、知的財産の価値評価情報として、公開に耐えるだけの客観性と利用価値を具備した測定値が得られるか否かに関する科学的証拠である。 そこで今年度は、商標権を中心とするブランド価値情報に焦点を当てて、証券市場での当該企業の評価額としての株価水準との関連性の有無と程度を統計的に分析した。調査対象としたのは、経済産業省のブランド価値評価研究会が提示するモデルに基づく2001年と2002年の価値評価額の情報であり、利用した企業価値評価モデルは割引超過利益モデル(いわゆるオールソン・モデル)である。 実証研究の結果、次の発見事項を得た。1.経済産業省モデルに基づくブランド価値評価額は、貸借対照表の純資産額および将来の損益計算書に計上されるであろう予測利益額を所与としても、株価水準との間でプラスの統計的に有意な追加的関連性を有する。2.純資産と利益の情報に、ブランド価値評価額を含めた3変数の企業価値評価モデルが生み出す理論株価と対比することにより、割安株と割高株を識別して展開する株式投資戦略は、市場平均を上回るプラスの超過収益をもたらす。 したがってブランド価値情報は、企業価値をよりいっそう適切に反映した株価形成、およびそれによってもたらされる企業間での資金配分を合理化するために必要な情報として、財務報告制度に含めることを検討するに値するといえる。このようにして本年度は商標権に焦点を当てて分析したが、次年度は企業の研究開発活動とそれによって生み出される特許権の価値評価情報を分析対象にする予定である。
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Research Products
(1 results)