2004 Fiscal Year Annual Research Report
企業価値評価モデルに適合した会計情報の公開制度に関する実証研究
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15530302
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
桜井 久勝 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (10127368)
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Keywords | 企業価値評価 / 割引配当モデル / キャッシュ・フロー / 発生主義利益 / 割引超過利益モデル / 知的財産 / ブランド価値評価 / 無形資産 |
Research Abstract |
企業株式の時価総額で把握した価値と、当該企業の財務情報との関連性を考察し、証券取引法の企業内容開示制度の枠内で分析するため、理論的な側面と実証的な側面の双方について研究を行い、次の実績を上げた。 まず、理論的な側面については、時価総額と財務情報を関連づける代表的な理論モデルとして、割引配当モデル、割引キャッシュフロー・モデル、割引超過利益モデルを取り上げて、相互に優劣比較を行った。その結果、割引配当モデルが出発点となる基本的モデルであり、これにキャッシュフローの定義式を代入すれば、割引キャッシュフロー・モデルが導出され、また、利益と純資産の関係を規定するクリーン・サープラス式を代入すれば、割引超過利益モデルが導出されることを明らかにした。このことは、理論モデルとして三者が基本的におなじものであることを意味しており、モデル間の優劣を判断しようとすれば、実証的な評価にその多くを依存するという合意を有することを示唆している。すなわち、割引配当モデルで必要とされる将来期間の配当の予測値、割引キャッシュフローモデルで必要とされる将来期間のフリー・キャッシュフローの予測値、および割引超過利益モデルで必要とされる将来期間の純利益の予測値のうち、いずれかが首尾一貫して予測上の優位性を有するか否かという問題に帰着するとの含意がそれである。またこの問題は、現金収支を中心としたキャッシュフロー会計の情報と、取得原価の期間配分を基盤とする発生主義の会計利益情報の間での、相対的な優位性比較という会計学上の古くて新しい研究課題と軌を一にするものであると言える。言うまでもなく、現行の証券取引法のもとで行われている企業内容開示制度は、発生主義の会計利益の優位性を前提として構成されている。 そこで第二に、実証的な側面の研究として、発生主義利益を前提とした割引超過利益モデルが現実の株価形成を説明する能力を評価するとともに、開示情報として不十分な点を探索する目的で、株価を非説明変数とし、純資産と純利益を説明変数とするモデルを出発点とし、これに企業のブランド価値評価額を説明変数として追加した場合の実証的関連性を分析した。この結果は、超過利益から導出されたブランド変数が有意な説明力を有することを示しており、キャッシュフロー情報に比した発生主義会計情報の優位性を含意している。ブランド等の知的財産情報の財務報告については世界的な関心が高まっていることから、この実証研究の成果を英語で取りまとめた。
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Research Products
(2 results)