2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530308
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
加藤 達彦 明治大学, 商学部, 教授 (20204480)
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Keywords | 実験会計学 / ゲーム理論 / 実験経済学 / レモン市場 / シグナリング・ゲーム / 会計監査 |
Research Abstract |
本年度は監査の購買コストと監査の信頼性の関係を中心に実験的に考察した。検証は、監査の購買コストの大小が、経営者と投資家の行動にどのような影響を及ぼすかに焦点を当てた。監査のシグナリング・モデルから、監査コストが小さくなるほど、経営者が努力を選択せずに監査を買った時の一時的利益が大きくなり、騙まし討ちの誘惑が大きくなる。ところが監査コストが大きくなるにつれて、騙まし討ちの一時的利益が小さくなり、完全に努力回避的な経営者が監査を買うことが無意味になる瞬間が早く訪れる。この結果、監査の購買が努力を撰択した誠実な経営者を示すシグナルとして機能し、投資家も投資を選択することが最適な選択となるはずであった。 ところが監査の購買コストの大きな市場では小さな市場より、経営者は努力をせずに監査を買って投資家に騙まし討ちをかける行為が多くなった。その結果投資家も守りに入り投資の選択は減少し、両者の獲得報酬も減少してしまっている。このことは、監査のコストが高くなると、監査の信頼性を利用して経営者が努力自体を回避してしまう行動をとることを示唆している。経営者は,努力と監査のコストを合計したものをシグナリングのコストとして考えてしまい、直接観察できる監査の購買にはコストをかけるが、観察できない肝心の努力のコストを節約した可能性がある。 ゲームでは監査の購買コストが大きくなった分だけ、経営者の獲得報酬も少なくなる。経営者は、この減少分を理不尽なものと考え、投資家にも同じ理不尽を経験させるために、騙まし討ちをかけたという可能性も排除できない。現実に日本の経営者は、監査報酬の増大を理不尽なものと考えている可能性があり、経営者の本音を代弁した行動が実験でも表れた可能性がある。
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