2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530314
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
城本 るみ 弘前大学, 人文学部, 助教授 (60302014)
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Keywords | 現代中国 / 高齢化 / 社会保障 / 地域福祉 / 地域間格差 / 市場経済化 / 世代間関係 / 社会階層 |
Research Abstract |
平成16年度は、平成15年度に実施できなかった北京・上海・長春の3都市の比較調査を実施することができた。今回の海外調査及び収集した資料から以下のような知見を得ることができた。 1.北京・上海などの大都市圏では、都市化に伴う地価高騰の影響もあり、郊外型高齢者福祉施設が増加しており、比較的高収入高齢者層の郊外移住が進行している。ただし郊外型施設の場合、医療体制の充実がともなっていない場合も多く、課題を抱えている。 子女との同居を選択する場合は、収入の高い子女世代が農村地域から都市に親を呼び寄せるケースや子女世代が市街地から居住空間にゆとりのある郊外の広い新居へ移転するケースも以前より増加している。 2.いずれにせよ子女世代の収入の多寡と高齢者自身の収入に居住条件や生活環境が左右されており、子女世代が高収入の場合は、高齢者が移住するケースが多い。子女との同居・施設入居を問わず、高齢者自身の移住に伴う環境の変化への対応問題は、今後高齢者福祉における大きな課題となることが予想される。 3.上海の高齢者福祉施設におけるインタビューでは、施設長が人的資源の充実といったソフト面よりも、施設設備の充実などハード面の整備に重点を置いている傾向が顕著にみられる。大都市では今後、施設の差別化や競争激化が予想されているが、住民も運営側も大規模国営施設を重視している傾向に変化はみられない。 4.中国におけるNPO団体は、大都市圏においてもまだ成熟段階には達していない。「社区服務」という地域福祉を充実させる政策がとられていても、市民や行政の意識も含め、地域に根付いた高齢者福祉体制の充実をはかる段階には程遠い印象が強く、高齢者福祉ではあくまでも私的扶養が主体であり、公的支援の整備はまだ課題が多い現状にある。今後NPOをはじめとする地域福祉政策の充実については中国の高齢者福祉の大きな焦点となることが予想される。
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Research Products
(1 results)