2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530314
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
城本 るみ 弘前大学, 人文学部, 助教授 (60302014)
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Keywords | 現代中国 / 高齢化 / 社会保障 / 地域福祉 / 地域間格差 / 市場経済化 / 世代間関係 / 社会階層 |
Research Abstract |
平成17年度は北京・長春の2都市の現地調査を実施し、また国内2学会でこれまでの研究成果を発表した。 海外調査および資料収集の結果、以下のような知見が得られた。 1.北京近郊に知識層や幹部層を中心とする高所得高齢者に入居を限定した高齢者マンション居住区があらたにつくられている。ここは他施設との差別化をはかるために、これまでの中国にはみられなかった入居者への徹底したサービスと快適な居住環境がうたわれており、入居者の生活満足度も高い施設である。 こうした高齢者の大規模居住区は今後の中国における施設ケアのひとつのモデルケースとされているが、実際の入居費用や条件等を考えると入所者は限定され、このような施設が入居型サービスの主流になることは考えにくい。高齢者間における生活格差の拡大傾向の象徴と考えたほうが理解しやすい。 2.このような非国営施設は大都市を中心に増加傾向にあり、中国政府が福祉分野において民間を活用する方向に移行していることがうかがえる。特に大規模施設は、当該地域における高齢者サポート体制の中核施設となることが期待されており、所轄地方政府は施設認可の際の優遇策などで支援している。 長春市民政局では今後深刻化が予想される寝たきり老人の介護を民間施設に積極的に引き受けてもらうよう指導しており、また地方都市の施設間協定の締結による健康な前期高齢者の転地療養制度を検討中だという。1人っ子世代の親の定年期を目前に控え、担当者にも以前より焦燥感がみうけられる。 3.長春のような中規模都市では国営施設の老朽化が目立ち、老人施設運営における民間への移行がかなり顕著にみられた。ただし施設間格差も大きいため、政府認可の大規模民間施設は半官半民という性質が強い。 完全な「民」への移行にはなお時間もかかり課題も多いが、福祉分野における民間活用傾向はサービス提供を含め全般的なものとなっており、予想以上の速度で進行しているといえる。
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Research Products
(2 results)