2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530314
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
城本 るみ 弘前大学, 人文学部, 助教授 (60302014)
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Keywords | 現代中国 / 高齢化 / 社会保障 / 地域福祉 / 地域間格差 / 市場経済化 / 世代間関係 / 社会階層 |
Research Abstract |
平成18年度は長春・上海の大陸2都市大陸における調査を実施し、最終年度であるため大陸における高齢者問題を比較検証するため、台湾においても政府の福祉担当部門の聞き取り及び高齢者施設の見学を実施した。 海外調査および資料収集の結果、以下のような知見が得られた。 1.長春市の高齢者施設に関わる問題は昨年度から大きな進展はみられなかった。半官半民という性質が強い民間施設においても、完全な「民」への移行にはなお時間もかかり課題も多い。施設の差別化についても、北京や上海でみられるような高級化する施設の出現がみられず、施設そのものの格差拡大傾向はあまり顕著とはいえない。しかし市場経済化の浸透とともに、内陸型中規模都市においても高齢者間における生活格差の拡大傾向はより顕著になっていることがわかった。 2.台湾政府の老人福祉担当者によれば、台湾では在宅で家族とともに暮らしたいという高齢者の要求が高く、サービスを提供する側としては高齢者自身の意識改革も必要だと考えている。デイサービスのニーズは南北差も大きく、自治体によるサービス実施の差異もみられる。現在は政府主導で各地域に保健センターのようなコア施設を設置し、政府が補助金を出資し、地域ボランティアで運営していくことを目指している。介護保険の導入を検討中であり、全体の方向性としては、在宅福祉を中心として、コミュニティケアと施設ケアを両軸に据えている状況である。 3.台湾北部都市において複数の施設を見学することができたが、台湾ではすでに外国籍ヘルパーを多数雇用しているのが大きな特徴である。施設は入所者の身体レベルによって分類されており、政府運営施設の入所率は平均して7割程度である。現在は高齢者の約6割が子女と同居しているが、施設に入ってもよいという高齢者は増加傾向にあるという。大規模施設も多く、当該地域における高齢者サポートの中核施設となることが期待されている。台湾の高齢者福祉はNPOやボランティアの進展度が大陸と異なり、また異なる様相がみられ興味深い。
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