2003 Fiscal Year Annual Research Report
社会科学における民族誌的手法の体系化と深化に関する実証的研究
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15530320
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
佐藤 郁哉 一橋大学, 大学院・商学研究科, 教授 (00187171)
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Keywords | 定性的調査 / 民族誌的方法 / 学習過程 / フィールドワーク / アクションリサーチ / 解釈モデル / テキスト・データ / 徒弟修行モデル |
Research Abstract |
実証研究における基本的なフレームワークを構築することを目指して、これまで収集・蓄積してきた民族誌的社会調査に関連する資料を総点検して整理した上で、より具体的なリサーチ・トピックを設定することを目指した。あわせて、現場調査を主な手法として実証研究を続けてきた9名の研究者を対象として問題発見的な聞きとりをおこない、2年度以降のインタビューフレームの策定に向けた予備調査をおこなった。さらに、当初2年度以降におこなうことを予定していた、テキスト・データを中心とする定性的資料の分析法についての基本的な文献サーベイを前倒しで開始した。 その結果、以下のような点が明らかになった。 1.「定性的調査」の多様性.文献サーベイおよび聞きとりの結果から、民族誌的方法を含む定性的方法としてくくられる調査法にはきわめて広いバリエーションと見解の対立があることが明らかになった。特に、実証的方法の位置づけに関しては鋭い対立が存在する。 2.対立軸.上記の見解の対立に関しては、少なくとも(1)分析モデルをとるか解釈モデルをとるか、(2)純研究モデルをとるかアクションリサーチ的志向を持つかという2つの軸が重要であるらしいことが浮かびあがってきた。 3.調査法の学習・伝承経路.聞きとりの結果から、民族誌的方法の学習過程に関して、少なくとも過去10数年の間に関しては、従来の徒弟修行的な学習過程とはかなり異質の、文献等を通した知識の習得とそれにもとづく試行錯誤的プロセスが重要な役割を占めているらしいことが浮かびあがってきた。(これは、2年度以降に検証していくべきテーマとなる) 4.定性的資料の分析法.文献サーベイおよび聞きとりの結果から、少なくとも日本においては、テキストデータの系統的分析については、きわめて原初的段階にあるらしいことが明らかになってきた。この背景について探ることが2年度の重要な課題となる。
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Research Products
(1 results)