2004 Fiscal Year Annual Research Report
社会科学における民族誌的手法の体系化と深化に関する実証的研究
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15530320
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
佐藤 郁哉 一橋大学, 大学院・商学研究科, 教授 (00187171)
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Keywords | 定性的調査 / トライアンギュレーション / 学習過程 / フィールドワーク / 方法論的複眼 / テキストデータ / 大学院教育 / 定量的調査 |
Research Abstract |
15年度に構築した基本的な分析フレームワークにもとついて、より広範囲の対象者(約30名)に対して聞きとり調査を実施した。それとともに、15年度から継続して実施してきた民族誌的社会調査に関連する文献資料の収集と分析にもとついて、今年度は、特に定性的調査と定量的調査の歴史的な関連についての検討をおこなった。さらに、初年度からの継続でおこなってきた、テキスト・データを中心とする定性的資料の分析法について詳細な文献サーベイをおこなった。 その結果、以下のような点が明らかになった。 1.トライアンギュレーション的発想の浸透.文献サーベイおよび聞きとりの結果からは、定性、定量両アプローチに関して、広い範囲でトライアンギュレーション(方法論的複眼)的発想が採用されていることが明らかになった。もっとも、それがどの程度調査者に意識化され、またどの程度系統的かつ戦略的に用いられているか、という点についてはかなりのバリエーションが存在することが判明した。 2.調査法の学習・伝承経路.聞きとりの結果からは、民族誌的方法の学習過程に関して、文献等を通した知識の習得とそれにもとづく試行錯誤的プロセスが重要な役割を占めているらしいことが明らかになったが、その半面で、大学や研究所における系統的なトレーニングの機会が決定的に不足しているという問題も浮かび上がってきた。これは、特に、大学院生の量的増加という傾向とあいまって定性的調査による研究成果の質的充実に関して大きな問題となっている。 3.定性的調査と定量的調査の歴史的な関連.主に文献研究の結果から、少なくとも1930年代前後には、定性的方法と定量的方法との問に密接な関連がある事例が少なくないことが判明した。この点については、本研究の成果として翻訳刊行された『新訳・数字で語る』がそれを象徴していると言える。
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Research Products
(2 results)