2005 Fiscal Year Annual Research Report
社会科学における民族誌的手法の体系化と深化に関する実証的研究
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15530320
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
佐藤 郁哉 一橋大学, 大学院・商学研究科, 教授 (00187171)
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Keywords | 定性的調査 / トライアンギュレーション / 調査体験 / 定性的データ分析 / ソフトウェア / 大学院教育 / 定量的調査 / テキストデータ |
Research Abstract |
平成16年度までの成果をふまえて、平成17年度はより焦点を絞って、各分野における定性的調査の第一人者に、そのリサーチの体験談と技法上の要点について現場ないしそれに近いサイトで聞きとる作業を重点的に行った。それとともに、初年度から継続して実施してきた民族誌的社会調査に関連する文献資料の収集と分析に基いて、今年度は、テキスト・データを中心とする定性的資料の分析法について実際の定性データを用いて分析実践を行い、それをもとに技法書の執筆にとりかかった。その結果、以下のような点が明らかになった。 1.トライアンギュレーション的技法のバリエーション.文献サーベイ及び聞きとりの結果から、「方法論的複眼」がどの程度系統的かつ戦略的に用いられているか、という点についてのバリエーションを確認した。その結果、定性データの取扱いについては特に見解の相違があることが明らかになった。 2.調査法の学習法.聞きとり及び学会等における発表・討議の結果からは、昨年度も確認した、大学や研究所における系統的なトレーニングの機会が決定的に不足しているという問題がさらに深刻なものとして浮かび上がってきた。これは、特に、大学院生の量的増加という傾向とあいまって定性的調査による研究成果の質的充実に関して大きな問題となっている。また、教育プログラムそれ自体が、現場調査を一般的素養として位置付けるのか、それとも本格的な職業訓練の一貫として捉えるのかが曖昧になりがちである事がネックになっていることも判明した。 3.定性データの分析と理論構築.実際の現場調査において収集された定性データ(主に聞きとり記録)を専用のソフトウェアによって分析した結果からは、既存のソフトウェアが2バイト系の言語に完全には対応していない事が大きな問題であり、今後解決すべき課題として浮かび上がってきた。この課題については平成18年度に検討を進めていく。
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Research Products
(3 results)