2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530322
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
渡邊 登 新潟大学, 人文学部, 教授 (50250395)
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Keywords | 市民社会 / 公共圏 / 住民投票 |
Research Abstract |
本年度の目的は、極めて日本的状況として評価していた、国ないし都道府県レベルの決定を遵守し、住民投票による住民の決定への直接的参加を拒絶していた上意下達的な意思決定スタイルの地域社会において住民投票が正当性を獲得しつつある状況が、韓国の地域社会においても顕在化している点、特に典型的相似的例として「全羅北道扶安群の放射性廃棄物処理場反対運動における自主管理の住民投票の実現」(以下、「扶安事例」)について着目し、民主主義の強化過程consolidationにあって市民社会確立・成熟化とともに伝統的規範・旧来からの社会関係が相克・葛藤している(日本とのタイムラグはあるものの)同様の過程を経験している韓国を「写し鏡」として、とりわけ巻町の事例との比較によって、その異同を考察することであった。 まず、朝鮮日報、OhmyNews等々の記事、反対運動グループのHP等で「扶安事例」についての詳細な経緯を把握し、受益圏の拡散と受苦圏の局地化という問題構図、地元首長の「誘致」という意思決定が住民の「意思」と乖離していたことで問題化することなどの共通点を明らかにした。次に、問題化以降の解決プロセスにおける主体層であるが、2回に亘る現地調査(ソウル、扶安)でのリーダー5名へのインタビューによって、「扶安事例」ではカトリック、プロテスタント、仏教、円仏教等の宗教指導者、地元自営業者(農民・漁民・一部商工自営業者)、主婦、退職高齢者、教員といった地元住民層とともに、全国レベルの市民団体(環境運動連合、参与連帯等)の役割が確認できた。その諸主体間の位置づけ、関係性、役割分担等は、さらに多くのリーダーへのインタビューが必要であり、次年度の現地調査で明らかにしたいと考えている。
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